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“U-15”プロコン松山大会、松山工業高校メカトロ部が中学生を指導

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 今年も愛媛県松山市に「プロコンの冬」がやってきた。12月17日、松山工業高校を会場に開催された「U-15プログラミングコンテスト」には、市内や近郊から18人の小・中学生が参加。松山工業高校メカトロ部の部員がチューターにつき、プログラミングの基礎を学んでから大会に臨んだ。

 松山大会は、大会参加資格を「中学生以下」として「U-15」を掲げてはいるが、高校生が参加者にプログラミングを教え、コンテストではゲームプラットフォーム「CHaser」を使用するなど、基本の枠組みは北海道旭川市などで開催されている「U-16プログラミングコンテスト」と同じ。昨年第1回大会を開催し、当時中学1年生の金島綾さんが初代のチャンピオンに輝いた。

 今年も昨年同様、夏休みのポリテクセンター愛媛「親子ものづくり体験教室」でプログラミング教室を開催。高校生が中学生にプログラミングを教えながら、12月の大会への参加を促した。12月17日の大会には、夏休みの教室に参加した中学生や、昨年の大会参加者が友人を誘って来場するなど、小中学生18人が参加し、午前中にプログラミング教室、午後には学んだ成果を披露するかたちの大会に臨んだ。

午前中のプログラミング教室では、参加者2人に1人のメカトロ部員がついてプログラミングを指導した
午前中のプログラミング教室では、参加者2人に1人のメカトロ部員がついてプログラミングを指導した

 会場は松山工業高校図書館棟2階のコンピュータ室と視聴覚室。午前のプログラミング教室では、講師を務めた松本統一郎さんが参加者の習熟状況をクライアントモニタでチェックしながら、大会に移行するタイミングを待った。真剣な表情でモニタを見つめ、手を動かした18人は、講師役のメカトロ部員たちの手を借りながらプログラムを完成させ、大会が始まった。

 大会で使用するゲームプラットフォーム「CHaser」は、取ったアイテムの数や相手の上にブロックを置くことで勝敗を決する対戦型のゲームで、参加者は自分のコマの動きを制御するプログラムを書く。松山大会では、まずコンピュータとの対戦で点数を競う予選で順位を決め、上位8人が決勝トーナメントに進み、10人は順位決定トーナメントに回った。

相手より多くのアイテムを取得するか、相手の上にブロックを置くか、相手が自滅するかで勝つことができる
相手より多くのアイテムを取得するか、相手の上にブロックを置くか、相手が自滅するかで勝つことができる

 決勝トーナメントは、先手後手を替えながら行う2回戦制で、メカトロ部顧問の山岸貴弘教諭の実況解説つきで進行。コマ同士が近づくと参加者から声が上がり、相手の上にブロックを置いて勝つと拍手が起きる。同じところをぐるぐる回ってしまったり、自爆してしまったりするたびにため息が聞こえる。参加者も、教えたメカトロ部員たちも、同じ目線で楽しんでいた。

参加者全員で記念撮影。賞状を手にした4人は、左から3位の西田竜登さん、優勝した井上晶さん、準優勝の若宮春吾さん、3位の菊池涼月さん
参加者全員で記念撮影。賞状を手にした4人は、左から3位の西田竜登さん、優勝した井上晶さん、準優勝の若宮春吾さん、3位の菊池涼月さん

 トーナメントでは、準決勝の接戦を制した伊予市港南中学校2年生の井上晶さんが、決勝戦でも逃げ切って優勝した。準優勝には、昨年の大会でも準優勝だった松山市立南第二中学校2年生の若宮春吾さんが入った。優勝した井上さんは、株式会社BCNが主催するBCN ITジュニア賞2018表彰式に招かれ、新設される「BCN ITジュニア U-16賞」が授与される予定だ。

  U-16プロコンは、さまざまな段階の「子どもたちの未来をつくる」活動だ。BCNとNPO法人ITジュニア育成交流協会は、今後も全国にこのムーブメントを広げるために支援活動を展開していく。


中国プログラミング教育最前線(3)山東建築大学コンピュータ科学技術学院

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 中国・山東省の山東建築大学は、およそ2万6000名の学生を擁する省立大学。建築、土木、交通、空調、芸術などをはじめとして全部で19の学部がある総合大学だ。コンピュータ関連の学部は山東建築大学コンピュータ科学技術学院で済南市にある。ここでプログラミングを教える杨磊教授に、山東建築大学コンピュータ科学技術学院の教育の実情を聞いた。

 

●卒業後のニーズを受けてJAVAに力を入れて教育

 山東建築大学コンピュータ科学技術学院には、コンピュータ科学技術学科、ソフトウェアエンジニアリング学科(開発・テスト)、ネットワーク工学科の3つの学科がある。学生は合せて1500名。教授をはじめ66名の教師がコンピュータやソフトウェアを教えている。杨先生はソフトウェアエンジニアリング学科に所属し、主にソフトウェア開発を教えている。

 

山東建築大学コンピュータ科学技術学院 杨磊教授
山東建築大学コンピュータ科学技術学院 杨磊教授

 ソフトウェア開発では、学生が入学するとまずOSなどのコンピュータのこそ知識を勉強し、開発言語の勉強に進んでいく。杨教授は「現在山東建築大学コンピュータ科学技術学院で最も力を入れている言語はJAVAだ」と語る。山東省立の大学であるため、研究よりも社会への人材供給に重きを置いている。そのため、現在山東省で特にニーズが高いJAVAを中心に教えているという。しかし、将来的に主流言語が変わっていっても対応できるよう、コーディングそのものよりも、考え方を重視した教育方針を採っている。「CやC++といった言語は組み込み系ではよく使うが、プログラム開発では、JAVAが主流。JAVAの基礎からはじめ、Webのフロント回りを勉強し、JAVA EE(Enterprise Edition)に入っていく流れ」だという。

 学生のプログラミングに対するモチベーションについては、2001年以降中国政府が大学を大幅に増やした結果、大学に入学するハードルが低くなり、学生のレベルが一時的に大きく下がった時期があった。また、この時期は経済も不安定で親も子どもの教育どころではなかった。さらに一人っ子政策で結果的に増えたわがままな一人っ子の教区が難しかったという面もある。しかし、経済が成長期にさしかかった90年以降生まれた子どもたちの親は、教育に対する関心も高まってきた。その結果、徐々に学生のレベルも上がってきているようだ。山東建築大学の中でのコンピュータ科学技術学院の位置づけに関しては「建築関連よりもやや劣るが、確実にポジションが上がってきている」と杨教授は話してくれた。

 

山東省済南市にある山東建築大学コンピュータ科学技術学院
山東省済南市にある山東建築大学コンピュータ科学技術学院

●人気の卒業制作はBigDataや画像解析、携帯ゲームなど

 卒業制作で取り組むプログラムでは、AIを利用するまでには至っていないが、BigDataや画像分析、顔認識システムなどが人気だ。そのほか、携帯アプリやゲームも人気だ。企業向けWebサイトの制作なども多いという。杨教授の研究テーマと関連が深いものに関しては、毎年7-8名のグループと一緒につくるものもあるという。政府向けの情報管理システムや管理系の制作が多いという。最近では、学生の出席管理システムもつくっている。100名の学生の講義への出欠を数秒で把握するというもの。GPSと組み合わせ先生との距離で出欠を判定することもできる。

 大学院の院生は14名とわずか。学院内から大学院に進む学生はさらに一握りで、他の大学から進学するパターンが多いという。その他の進路も、地方大学の位置づけであるため、学生の多くは山東省の企業に就職する。「私が担任していたクラスを例に取ると、40数名のクラスのうち、およそ30名が地元企業に就職。10名が北京の企業に就職、海外に出たのは1名、そのほかが数名という感じ」(杨教授)だ。就職した学生のうち、およそ6割は何らかの開発の仕事に就いているという。

 

●学生を励ます目的で開催する、山東省大学生ソフトウェア設計コンテスト

 山東建築大学コンピュータ科学技術学院の学生が目指すプログラミングコンテストとしては、国際的な大会であるACM-ICPCや、中国の全国ソフトウェア大会、挑戦杯、創業大会、などがある。しかし、いずれも誰もが参加できるような大会ではない。しかし、山東省で毎年開かれる山東省大学生ソフトウェア設計コンテストは誰もが参加できるのが特徴。とにかく能動的に参加させ、学生を励ますのが目的だ。杨教授は、山東省大学生ソフトウェア設計コンテストの副秘書長を務めるキーマンでもある。2017年11月に開かれた表彰式では、課題の作成や審査、表彰式の運営などの功績が認められ特別功労賞を受けた。

 

山東省大学生ソフトウェア設計コンテストの表彰式で特別功労賞を受けた杨磊教授(左端)
山東省大学生ソフトウェア設計コンテストの表彰式で特別功労賞を受けた杨磊教授(左端)

 コンテストについて杨教授は「山東建築大学コンピュータ科学技術学院からの応募は2年生がほとんど。2年生のうち6割ぐらいの200名以上は毎年応募している。夏休みはみんなコンピュータ室にこもって毎日頑張っている。そうした学生を励ますため、プログラムが完成すれば何らかの賞がもらえるようにした。応募者の7割ぐらいが完成させている。とにかくプロセスを重視して学生を励まし、社会と接するチャンスをつくることを目的にしている」と話してくれた。若者の心に人ともす活動の重要性は、日中ともに変わらない。(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)

中国プログラミング教育最前線(4)山東交通学院 情報科学・電気電子工学学院

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 中国・山東省済南市の山東交通学院は、北京大学や精華大学などの一流大学群に次ぐ位置づけの国立総合大学だ。学生は全体でおよそ2万6000人で、1400人の教授が教えている。学部は自動車工学や鉄道交通、航空など交通に関するものを筆頭に、工学、理学、経営学など15に及ぶ。情報系の学部は情報科学・電気電子工学学院だ。ここで教鞭を執る張広淵副院長に情報系教育の現状について聞いた。

 

山東交通学院情報科学・電気電子工学学院の張広淵副院長
山東交通学院情報科学・電気電子工学学院の張広淵副院長

●企業のニーズに合致して第一線で活躍する人材を育成

 山東交通学院のなかでの情報科学・電気電子工学学院の位置づけは高い。大学独自の学部評価制度で算出すると、毎年変動はあるが、15学部のうち常に上位5位に入る。情報科学・電気電子工学学院は特に交通との関連性は薄いものの、あらゆるシステム開発の基礎を学ぶことができる学部として重要視されている。

 2000人の学生と80人の教授を擁する情報科学・電気電子工学学院は、電気工学・オートメーション学科、ソフトウェア開発のコンピュータ科学技術学科、情報管理・情報システム学科、電子情報学科という四つの学科に分かれている。電子情報学科はさらにIoT系のインターネットものづくり系と組込み系に分かれる。

 

山東交通学院 情報科学・電気電子工学学院
山東交通学院 情報科学・電気電子工学学院

 情報科学・電気電子工学学院のモットーは、国際化を視野に入れながら、応用力があって企業のニーズに合った第一線で活躍する人材の育成。特に企業ニーズの把握には力を入れ、提携企業へのアンケートや企業から講師を招いて開く特別講座などを通じて情報を収集。さらに夏休みなどを利用して、就職者が多い企業を先生や学生が訪れて調査したり、卒業生に対する追跡調査を行ったりして、多角的に企業ニーズを探っている。張副院長によれば、「2015年頃はHTMLや携帯アプリのニーズが高かったが、一昨年からはセキュリティやビッグデータ分野への関心が高まっている」という。一方で、「対日アウトソーシングに対する需要は、この2~3年でかなり落ちてきた」と語る。

 

●需要が高いSAP ERP、学生は引っ張りだこ

 特に需要が高いのは、主に情報管理・情報システム学科で扱うSAP ERPで、企業から大いに歓迎されている。在学中から入社のオファーがあり、1年目の年収が日本円でおよそ400万円に上ることもある。米調査会社のマッキンゼーによると、2015年の卒業生のうち、最も給与が高かったのは情報管理・情報システム学科の卒業生だったという。

 一方で、学生に人気があるのはセキュリティ分野。「情報が盗まれるという仕組みに興味がある学生が多いようで、進んで勉強する者が多い。次に人気があるのはビッグデータで、これは就職に有利という理由からだ。もちろん、コンピュータ原理やC/JAVAなどの言語、データベース原理など、基礎の基礎もしっかりと教えたい」と、張副院長は語る。組込み系学科では、学内で利用する指紋認証システムなどを開発しており、勉強の成果がかたちになるので、こちらも人気が高い。ハードとソフトの両方に強ければ就職にも有利になることから、人気がある。

 

学内で実際に使っている指紋認証の施錠システムは学生と共同で開発
学内で実際に使っている指紋認証の施錠システムは学生と共同で開発

 張副院長の研究分野は画像処理。「道を歩いている人たちを識別する技術や、医療機関向け画像処理などを研究している。さらに、顔の表情や運転の挙動などからドライバーの疲労度合いを自動的に判断するシステムなども研究している」(張副院長)。研究室には博士が4人、院生が3人、学部生が2~3人在籍し、一緒に日々研究を続けている。「例えば自動車関連では、現在は運転補助システムにとどまっているが、将来は自動運転やロボット分野に幅を広げたい」(張副院長)。

 

●就職した卒業生の9割前後がコンピュータ関連の仕事に就く

 学生の就職先は6~7割が国内の民間企業で、外資系が1~2割、国営企業や公務員が2割程度という比率だ。情報科学・電気電子工学学院の卒業生の約9割は何らかのコンピュータ系の仕事に就き、学んだ専門知識・技能を生かすことができる環境が整っている。就職先の地域は2割が済南市で、北京や上海、青島市でそれぞれ1割弱。残りもほとんどは山東省の他地域の企業に就職している。

 就職先は、有名なところではアクセンチュアやデロイトなどの外資系コンサルタントのほか、IBMやHP、ファーウェイなどのメーカーなど。日本のNECに就職して、東京に赴任している卒業生もいる。また、起業する学生も多く、教育関連機器を開発する会社で株式上場を果たしたOBがいるという。

 

●コンテスト参加は学業と不可分の位置づけ

 学生のモチベーションを高めるものとして、全国大学生電子設計大会や挑戦杯など、コンテストへの出場がある。張副院長は、「山東省大学生ソフトウェア設計コンテストには2005年から参加している。なかなかいい成績が取れなかったが、今年は、2等賞に3チームが入った」と、うれしそうに成果を語った。また、国際コンテストのACM-ICPCにも一昨年から参加している。学生たちにとってコンテストの果たす役割は大きく、カリキュラムによってはコンテストの準備に時間を割くものもある。また、参加することでの単位付与もあって、コンテストは学業と不可分の位置づけだ。

 

学生がドローンの試作に取り組んでいる実習室
学生がドローンの試作に取り組んでいる実習室

 国際交流という点では、アフリカ各国から30人を超える学生が留学。毎年、7~8名のスウェーデンからの交換留学生を受け入れている。このほかタイ、ベトナム、マレーシアとの交流を深めようと計画中だという。日本の帝京大学や大阪産業大学との交流も深い。

 若年者へのプログラミング教育について、張副院長は「まずは興味をもってもらうこと。地域の小・中学生を研究室に招いて、半日程度の見学会などを開催している。子どもたちはびっくりしながらも、とても興味をもつ。そうしたきっかけづくりが大切だ」と話してくれた。
(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)

BCN ITジュニア賞 2018表彰式、No.1企業と若者の力の融合目指す

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 BCNは1月26日、東京・港区のTKPガーデンシティ品川で、ジャンル別にIT・デジタル家電の年間販売数量No.1メーカーを表彰するBCN AWARD 2018の表彰式と、ITの分野ですぐれた技術をもつ生徒・学生を表彰するBCN ITジュニア賞 2018の表彰式を開催した。

 

BCN ITジュニア賞2018受賞者とNPO法人ITジュニア育成交流協会の協賛企業代表者
BCN ITジュニア賞2018受賞者とNPO法人ITジュニア育成交流協会の協賛企業代表者

 BCN AWARDは、全国の家電量販店、パソコン販売店、ネットショップから収集した実売データ「BCNランキング」にもとづいて、部門(ジャンル)ごとに年間の累計販売数量が最も多かった企業を表彰する賞。19回目となる今回の対象期間は2017年1月1日~12月31日で、ハードウェア85部門、ソフトウェア32部門の計117部門・56社が受賞した。

 

「BCN AWARD」「BCN ITジュニア賞」のロゴ
「BCN AWARD」「BCN ITジュニア賞」のロゴ

 

 表彰式の冒頭、挨拶に立った道越一郎実行委員長は、スクリーンに「A&Iでイノベーションを目指せ GOAL2025」というメッセージを投影した。A&Iとは、AWARDの「A」とITジュニアの「I」をとったもの。このメッセージには、日本のトップ企業と、IT業界の未来を背負って立つことを期待された優秀な若者の才能を融合させることで、2025年を目標に新たな価値を生み出していくという意味が込められている。

 道越実行委員長はスピーチのなかで、今年、「ITジュニアの卵」である16歳以下の生徒を表彰するBCN ITジュニア U-16賞を新たに創設したことを紹介。北海道旭川市で始まり、全国に広がりつつあるU-16プログラミングコンテストを通じて、地元の高校・高専生が小中学生にプログラミングを教えるという文化が広がっていると報告し、先の「GOAL 2025」を実現するためにも、このような動きを支援していく方針を強調した。

 BCN AWARD 2018の表彰式では、117部門で56社の受賞企業が年間販売数No.1の証となる「栄光のトロフィー」を受け取った。プレゼンターは、BCNランキングにPOSデータを提供する販売店と主催のBCNが務めた。会場中央のレッドカーペットを進み、ステージに上がった受賞企業の代表者は、プレゼンターの販売店幹部と固い握手を交わし、笑顔で記念撮影に応じた。

 続いて行われたBCN ITジュニア賞 2018表彰式では、6チームと個人4人の計27人に賞状とトロフィーが授与された。表彰式は昨年に引き続き、受賞者所属校の生徒が司会を担当。第17回高校生ものづくりコンテスト全国大会の電子回路組立部門で優勝した石田有希人さんと同じ愛媛県立松山工業高校の大地楓さんと河野ひよりさんが進行役を務めた。

 

ITジュニア賞表彰式の司会を務めた大地楓さん(左)と河野ひよりさん
ITジュニア賞表彰式の司会を務めた大地楓さん(左)と河野ひよりさん

 

BCN ITジュニア賞2018の受賞者は以下の通り。

 

・STEP――スコアブックと連動する動画閲覧システム制作チーム(国立鳥羽商船高等専門学校)

 

・EachTouch制作チーム(国立香川高等専門学校 詫間キャンパス)

 

・てんぱ組(東京都立産業技術高等専門学校 品川キャンパス)

 

・宮城県工業高等学校 情報研究部 プログラミングコンテストチーム

 

 ・OMNISCIENCE(立教新座高等学校)

 

 ・固有スキルせんたく板(埼玉県立越谷総合技術高等学校情報技術科29期生)

 

・小川広水(東京都立小石川中等教育学校)

 

・菅野楓(早稲田実業学校中等部)――表彰式は学事日程のため欠席――

 

・大西海輝(四国職業能力開発大学校)

 

・石田有希人(愛媛県立松山工業高等学校)

 

 受賞者を代表して挨拶に立った東京都立小石川中等教育学校4年生の小川広水さんは、「今回受賞したプログラミング言語の開発で重ねてきた努力が報われた」と喜びを表すとともに、「これまで自分の技術的な興味・関心でプログラミングを楽しんできたが、これからは多くの人の役に立つもの、そしていずれは人の心を動かすものをつくりたい」と、より高い目標に向かって技術を磨いていく意気込みを語った。

 

受賞者を代表して挨拶した小川広水さん
受賞者を代表して挨拶した小川広水さん

 

 新設のBCN ITジュニアU-16賞 2018は、U-16プログラミングコンテストの北海道大会、三重大会、松山大会でそれぞれ優勝した北海道旭川市立愛宕中学校3年生の成瀬有翔さん、三重県津市立南立誠小学校4年生の田丸皓大さん、愛媛県伊予市立港南中学校2年生の井上晶さんの3名が受賞。賞状の授与に先立って、「若者が子どもたちにプログラミングのイロハを教え、コンテスト出場へ導く」という旭川で生まれたモデルが、北海道内や愛媛・三重に伝播した動きが紹介された。

 

BCN ITジュニアU-16賞 2018を受賞した田丸皓大さん(左)、井上晶さん(中央)、成瀬有翔さん
BCN ITジュニアU-16賞 2018を受賞した田丸皓大さん(左)、井上晶さん(中央)、成瀬有翔さん

 

 BCN ITジュニア賞では、中国・四川省で開催されるモバイルアプリケーションの企画・開発コンテスト、Galboa(ガルボア)杯で優秀な成績を収めた若者に特別賞を授与している。今年は、「商品化の可能性が高い」と評価を受けた作品を制作した成都ソフトウェア学院の厳鵬さん、宋欣蔓さんが表彰式に招かれ、トロフィーを受け取った。

 

BCN ITジュニア特別賞を受賞した成都ソフトウェア学院の厳鵬さん(左)と宋欣蔓さん(中央)
BCN ITジュニア特別賞を受賞した成都ソフトウェア学院の厳鵬さん(左)と宋欣蔓さん(中央)

 

 BCN AWARDは次回で20回目を迎える。BCNの奥田喜久男会長兼社長は、ITジュニア賞の受賞者に向けて「少し遠いかもしれないが、皆さんにも必ず20年後がやってくる」と呼びかけ、ITジュニアたちが将来のIT業界で、日本を代表するような活躍をみせることに期待を寄せた。また、北海道・松山・三重以外の地域でもU-16プログラミングコンテストの開催に向けた動きがあることから、「来年はさらに新たな『ITジュニアの卵』をこの会場にお連れすることができると思う」と話し、BCN AWARD/BCN ITジュニア賞の表彰式を通じて、IT業界の発展に資する支援にさらに力を入れていく考えを示した。
(文:BCN 日高彰/写真:BCN 山下彰子・松嶋優子)
(構成:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

「BCN ITジュニア賞 2018」表彰式で若者とNo.1企業が交流

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 BCNが1月26日、東京・港区のTKPガーデンシティ品川で開催したBCN AWARD 2018/BCN ITジュニア賞 2018の表彰式では、トロフィー・賞状授与のセレモニーに続き、ITジュニア賞を受賞した生徒・学生とAWARD受賞企業の懇親会が開催された。会場には、受賞対象のコンテストに出展した作品を展示・解説するブースを設け、ITジュニアがBCN AWARD受賞企業関係者からの質問に答えたり、他の受賞者の作品を見学したりなど、交流を深めた。

 

BCN AWARD 2018/BCN ITジュニア賞2018懇親会
BCN AWARD 2018/BCN ITジュニア賞2018懇親会

 

 今回で13回目となるBCN ITジュニア賞では、16歳以下を表彰するBCN ITジュニア U-16賞を新たに創設。受賞者は、第4回U-16プログラミングコンテスト北海道大会・競技部門で優勝した北海道旭川市立愛宕中学校の成瀬有翔さん、第2回U-15プログラミングコンテスト松山大会で優勝した愛媛県伊予市立港南中学校の井上晶さん、第1回U-16プログラミングコンテスト三重大会・小学生部門で最優秀賞を受賞した三重県津市立南立誠小学校の田丸皓大さんで、表彰式では3人が同時にステージに立った。大勢が集まる懇親会の場では3人とも緊張した面持ちだったが、先輩や大人たちからの激励にしっかり応えていた。

 

】BCN ITジュニアU-16賞 2018を受賞した田丸皓大さん(左)、井上晶さん(中央)、成瀬有翔さん
】BCN ITジュニアU-16賞 2018を受賞した田丸皓大さん(左)、井上晶さん(中央)、成瀬有翔さん

 

 また、昨年12月に中国・四川省で開催されたモバイルアプリケーションの企画・開発コンテスト、Galboa(ガルボア)杯で優秀な成績を収め、BCN ITジュニア特別賞を受賞した成都ソフトウェア学院の宋欣蔓さんと厳鵬さんに、NPO法人ITジュニア育成交流協会の協賛企業から副賞が渡された。

 

BCN ITジュニア特別賞を受賞した成都ソフトウェア学院の宋欣蔓さん(左)と厳鵬さん
BCN ITジュニア特別賞を受賞した成都ソフトウェア学院の宋欣蔓さん(左)と厳鵬さん

 

 懇親会の間には、協会協賛企業のうち、副賞を提供した企業の方がITジュニアのブースを回り、副賞を手渡しながら受賞者に期待を込めて言葉をかけた。各受賞者の出典作品とコメントを紹介しよう。

 

●STEP――スコアブックと連動する動画閲覧システム 制作チーム(国立鳥羽商船高等専門学校)

左から、喜田真吾さん、濱口実弓さん、小山紗希さん、日本事務器株式会社の佐々木雅章執行役員技術本部長兼CTO
左から、喜田真吾さん、濱口実弓さん、小山紗希さん、日本事務器株式会社の佐々木雅章執行役員技術本部長兼CTO

 バレーボールなどのプレーを動画で撮影しながら、タブレットで得点やミスを記録していくと、スコアブックとダイジェスト動画ができるスポーツ分析システム。全国高等専門学校第28回プログラミングコンテスト(高専プロコン)の課題部門で文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞した。「運動部員からフィードバックを得ながら、実用的なシステムとして活用できるよう改良を重ねた」。

 

●EachTouch 制作チーム(国立香川高等専門学校詫間キャンパス)

前列左から時計回りに、吉田雄作さん、山崎佑馬さん、田上大智さん、指導教員の金澤啓三准教授、NPO法人ITジュニア育成交流協会の市川正夫理事・事務局長、竹内貫太さん、高志克俊さん
前列左から時計回りに、吉田雄作さん、山崎佑馬さん、田上大智さん、指導教員の金澤啓三准教授、NPO法人ITジュニア育成交流協会の市川正夫理事・事務局長、竹内貫太さん、高志克俊さん

 磁気を使ってタッチパネルを実現するシステムで、大型画面でのゲームやクリエイションツールなどに活用できる。第28回高専プロコンの自由部門で文部科学大臣賞を受賞した。「約1200個のセンサで磁気を検出している。これをすべて手作業で取りつけるのに非常に苦労した」

 

●てんぱ組(東京都立産業技術高等専門学校品川キャンパス)

左から、株式会社バッファローの井上武彦代表取締役社長、和田靖広さん、高松健さん、波多野陸さん
左から、株式会社バッファローの井上武彦代表取締役社長、和田靖広さん、高松健さん、波多野陸さん

 パズルのピース形状をコンピュータに取り込み、プログラムによってパズルの解を求める第28回高専プロコン競技部門で文部科学大臣賞を受賞した。「実物のピースをデータ化する処理が難しいことに加え、ピースの問題を解くのも計算量が多く、難度の高い課題だった」

 

●宮城県工業高等学校情報研究部プログラミングコンテストチーム

左から、トレンドマイクロ株式会社の宍倉豊執行役員コンシューマ営業本部本部長、間山千寛さん、吉田大志さん、菅原敏夫さん、八端拓巳さん、加藤健一教諭
左から、トレンドマイクロ株式会社の宍倉豊執行役員コンシューマ営業本部本部長、間山千寛さん、吉田大志さん、菅原敏夫さん、八端拓巳さん、加藤健一教諭

 コマの動きをプログラムで制御しながら得点を獲得するゲームプラットフォーム「ChaserOnline」で戦う第38回全国高校生プログラミングコンテスト(高校プロコン)で優勝した。「どのような作戦で、どのように動けばより多くの得点を獲得できるか、アルゴリズムを考えるのが一番大変だった」

 

●OMNISCIENCE(立教新座高等学校)

左から、中島正晴さん、西村太雅さん、株式会社ドスパラの西尾伸雄代表取締役社長
左から、中島正晴さん、西村太雅さん、株式会社ドスパラの西尾伸雄代表取締役社長

 漂流する宇宙船の中でサバイバル生活をするSFゲーム「Draw Near」で、U-22プログラミング・コンテスト2017(プロダクト)の経済産業大臣賞を受賞した。「宇宙船を拡張できるシステムなどに加えてグラフィックにもこだわり、多くのテクスチャデータをつくり込んだ」

 

●固有スキルせんたく板(埼玉県立越谷総合技術高等学校29期生)

左から、黒土直斗さん、山上翔さん、永薗朋弥さん、NPO法人ITジュニア育成交流協会の市川正夫理事・事務局長
左から、黒土直斗さん、山上翔さん、永薗朋弥さん、NPO法人ITジュニア育成交流協会の市川正夫理事・事務局長

 アナログ電子回路をコンピュータ上で設計して動作をシミュレーションする「Circuitor」で、U-22プログラミング・コンテスト2017(総合)の経済産業大臣賞を受賞した。「高校数学の範囲では回路の解析ができず、大学レベルの数学を習得する必要があった。独学で学んだので一番大変だった。実用的なソフトウェアにするには速度が必要で、アルゴリズムの調整にも苦労した」

 

●小川広水さん(東京都立小石川中等教育学校)

小川広水さん(左)とエレコム株式会社の柴田幸生常務取締役
小川広水さん(左)とエレコム株式会社の柴田幸生常務取締役

 ソフトウエアをより簡単に開発できるようにすることを目的に設計したプログラミング言語「scopion」で、U-22プログラミング・コンテスト2017(テクノロジ)「コンパイラとインタープリタの両方を開発していたが、時間がなくてインタープリタの開発を途中で断念したのが苦渋の決断だった。その後は自分のつくりたいものに集中し、楽しく開発することができた」

 

●大西海輝さん(四国職業能力開発大学校)

左から、株式会社アイ・オー・データ機器の細野昭雄代表取締役会長、大西海輝さん、指導教員の中山伸一講師
左から、株式会社アイ・オー・データ機器の細野昭雄代表取締役会長、大西海輝さん、指導教員の中山伸一講師

 競技時間内に組立て基板を製作し、それを制御するプログラムを書く第12回若年者ものづくり競技大会の電子回路組立て部門で、金賞/厚生労働大臣賞を受賞した。「受賞で自信がついた。競技プログラムでは課題が本番までわからないので、さまざまな課題に対応できるよう、事前にどれだけ準備しておくかが大事だった」

 

●石田有希人さん(愛媛県立松山工業高等学校)

左から、株式会社PFUの宮内康範ドキュメントイメージビジネスユニット執行役員、石田有希人さん、山岸貴弘教諭
左から、株式会社PFUの宮内康範ドキュメントイメージビジネスユニット執行役員、石田有希人さん、山岸貴弘教諭

 基板制作とプログラミングのスキルを競う第17回高校生ものづくりコンテストの電子回路組立部門で厚生労働大臣賞(優勝)を受賞した。石田さんは昨年の第12回若年者ものづくり競技大会では惜しくも銀賞。このコンテストでは電子回路組立部門唯一の高校2年生だったが、見事に優勝した。「毎日コツコツ続けることが大事だが、それが一番しんどい。がんばったことが結果につながってよかった」

入賞者は日本代表候補として合宿へ、日本情報オリンピック本選開催

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 情報オリンピック日本委員会は、2月10・11日の2日間、第17回日本情報オリンピックの本選を茨城県つくば市のつくばカピオで開催した。4時間の熱戦の末、見事金賞に輝いたのは筑波大学附属駒場中学校3年生の米田優峻さん。9月に開催される第30回国際情報オリンピックの日本代表選手候補の一人に選ばれた。

 

日本情報オリンピック本選会場のつくばカピオ
日本情報オリンピック本選会場のつくばカピオ

 

 第17回日本情報オリンピックは、12月に開催された予選に961人が参加。ここで選抜された80人が今回の本選に出場した。委員会が事前に準備したノートパソコンを使って、CまたはC++言語でプログラミングして問題を解く。ソースコードを提出し、正しければ得点が与えられる。競技時間は4時間で、問題は5問。満点は500点だ。5問中2問は比較的平易な問題だが、残り3問は国際大会クラスの難問。引率の先生方からは「年々問題が難しくなっている」との声が聞かれた。

 

アリーナにはキーボードを叩く音だけが響く
アリーナにはキーボードを叩く音だけが響く

 

 つくばカピオのアリーナに集まった80人の選手たちは、持込みが許されているチョコレートやアメ、マスコット人形などを机に配置し、プログラミングに集中。会場は、キーボードを叩く音だけが聞こえる緊張感溢れる雰囲気だ。引率の先生方が会場で観戦できるのは開始から10分までで、それ以降は選手たちだけ世界。静かだが激しい戦いが続いた。

 激戦の末、金賞に輝いたのは筑波大学附属駒場中学校3年生の米田優峻さん。銀賞は3人で、北九州工業高等専門学校2年生の井上航さん、N高等学校2年生の清水郁実さん、筑波大学附属駒場高等学校1年生の行方光一さんが獲得した。銅賞の該当者はおらず、16人に優秀賞が授与された。金賞、銀賞の4人と優秀賞の16人は、9月に開催される第30回国際情報オリンピックの日本代表候補として、3月に開かれる春期トレーニング合宿に招待される。ここでの成績にもとづいて、最終的に4人の日本代表選手を決める。

 

机上に置いたマスコットでリラックスする選手が多かった
机上に置いたマスコットでリラックスする選手が多かった

 

 第30回国際情報オリンピック日本大会は、9月1~8日の8日間、日本大会と同じつくばカピオのつくば国際会議場で、85の国・地域から約860人が参加して開催される。国際情報オリンピックの日本での開催は今回が初めてで、情報オリンピック日本委員会では、企業や団体、個人から広く協賛・協力を求めている。

 なお、日本委員会は3月24日、第17回日本情報オリンピックの表彰式と第30回国際情報オリンピックの日本代表選手発表会を東京都目黒区のNTTデータ駒場研修センター イベントホールで開催する。式典では記念講演会も予定している。情報オリンピック日本委員会事務局に登録すれば、式典に出席できる。協賛や表彰式など、くわしくは情報オリンピック日本委員会事務局(TEL.03-5272-9794/e-mail:info@ioi2018.jp)まで。


(ITジュニア育成交流協会 道越一郎)

 

本選終了後の問題解説会で解き方へのアプローチをていねいに説明
本選終了後の問題解説会で解き方へのアプローチをていねいに説明

高専教育システム、海外展開のいま――高専機構がシンポジウム

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 時代に適合した実践的技術者を養成するために、5年間の一貫教育を柱に1962年に始まった高等専門学校制度。独立行政法人国立高等専門学校機構(高専機構)は、この教育システムを海外の技術者教育に役立ててもらおうと、高専型教育の海外展開を進めている。3月16日、高専機構は東京・大手町のパレスホテルで、この現況を報告する「『高専 is KOSEN』~日本の高専から世界の高専へ~ 高専の国際展開シンポジウム」を、日本経済新聞との共催で開催した。

 シンポジウムの第一部は「高専の未来戦略」と題して、日本経済新聞社の田中陽編集委員、宮城高専(現仙台高専名取キャンパス)のOBである日揮の石塚忠社長COO、高専機構の谷口功理事長が鼎談。石塚氏が誕生間もない時期の高専とその後のエンジニアを巡る環境の変化を語ると、田中氏は日経産業新聞の「高専に任せろ」の取材を通じて得た教育現場の現在を説明。そして谷口氏は「変わっていないのは、実験・実習を重視した専門教育」としながら、このユニークな教育制度をグローバルに展開していく意義を説いた。

 続く第二部「高専の国際展開」では、文部科学省から宮川典子政務官、高等教育局専門教育課の松永賢誕課長が政府の支援と期待を表明。その後、高専機構が海外展開の重点国に定めるモンゴル、タイ、ベトナムで高専教育制度の導入を進める3氏が各国の現況を説明した。東京高専出身で高専機構モンゴルリエゾンオフィス現地代表も務めるウランバートル市議会のツァガーン・バイガルマ議員は、現在開校している3高専の状況とそこで学ぶ学生たちの成長ぶりをアピール。タイ立法議会のコソン・ペッツワン議員は、今年5月に「タイ高専コース」を開講する2校のテクニカルカレッジを紹介した。ベトナム国会のギエム・ヴー・カイ議員は、高専コース設立を目指している4校の大学・短大を紹介しながら、今後、教員・学生の相互交流を推し進めていく意欲を語った。

 谷口功理事長は、「高専卒業生が『社会のお医者さん(Social Doctor)』として認知されるよう、国内外で活動していく。そして『KOSEN』を英語辞典『ウェブスター』に載せたい」と語り、シンポジウムを締めくくった。

(ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

U-16プロコン札幌大会開催へ、実行委員会が発足

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 8年前、北海道旭川市で産声を上げたU-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)。旭川、釧路、帯広に続く道内4都市目の開催を目指して、有志たちの奮闘が始まった。旭川大会の話を聞き、情報を集めながら構想を温めてきた北海道情報セキュリティ勉強会代表/LOCAL理事の八巻正行さんが手を挙げて協力者を募り、U-16プロコン札幌大会のキックオフミーティング/第1回実行委員会開催にこぎ着けた。

U-16プロコン札幌大会キックオフミーティング/第1回実行委員会
U-16プロコン札幌大会キックオフミーティング/第1回実行委員会

 4月7日の午後、札幌市中央区の会議室には、北海道のOSSコミュニティである一般社団法人LOCALのメーリングリストやホームページでの告知などを通じて集まった23人がいた。IT企業のプログラマやプログラミング教育関係者、高校教諭や専門学校関係者など、横顔はさまざまだが、大会の開催目的――①パソコンが好きな子どもたちの夢や目標となる場所を提供する②子どもたちにプログラミングやITに関する興味を深めてもらい、ITに興味をもつ子どもたち同士の健全な交流と、将来のITエンジニア育成につなげる――に賛同した志は同じ。ここに旭川でU-16プロコンを立ち上げたメンバーの一人、北海道旭川工業高校の下村幸広教諭がアドバイザーとして加わった。コミュニティで顔を合わせる仲間もいるが、ほとんどは初対面ということで、キックオフミーティングは自己紹介から始まり、計画する大会の概要と競技部門で使用する対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser」の説明で終了。同じメンバーで具体的な事項を決めていく第1回実行委員会に移った。

 実行委員会では、開催日や大会までのスケジュール、開催規模、会場候補、予算の検討、後援団体/協賛企業候補の洗い出しなどを行い、各実行委員に役割を振った。さらに、事前講習会で使用するプログラミング言語をPythonに決定。八巻さんをはじめ、U-16プロコンの実際の大会に行ったことがない人がほとんどで、すべて白紙からの立ち上げということで、旭川大会の例などを参考にしながらも、札幌という大都市で大会を実現するための検討事項は多い。実際に、後援団体/協力企業、会場などは、現段階では「候補」がほとんど。それでも、U-16プロコンの特徴である「プログラミングを学ぶ高校生や高専生が先生になって、子どもたちにプログラミングを教える」「『子どもたちの未来をつくる』という志を持った大人が運営を支える」「地域に根ざす」を維持しながら大会を成功に導くために、活発な討議が行われた。

 札幌市は人口196万人と、東京を除けば全国4位の大都市だ。そしてユネスコ創造都市ネットワークに加盟する札幌には、映画/音楽/インタラクティブのクリエイティブ産業を横断し、官民が一体となって開催する独自の国際コンベンション「No Maps」がある。「札幌ならでは」を追求しながら、しかし一方で政令指定都市で開かれるU-16プロコンのモデルとして、札幌大会にかかる期待は大きい。札幌農学校に学び、北海道を愛した文学者、有島武郎はこう書いた――草のなかった処に青い草が生える。花のなかった処にあらん限りの花が開く。人は言葉通りに新たに甦って来る。(『北海道に就いての印象』)

(文・写真 ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)


中国プログラミング教育最前線(5)済南大学情報科学工学学院

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 中国・山東省済南市の済南大学は、山東省政府と中国・教育省、山東省の主要な建設大学が共同で設立した総合大学だ。済南市の南部に位置し、全体でおよそ3万7000人の学生が学んでいる。24の学院を擁し、およそ300人の教授、700人の准教授をはじめ、2100人の教員が教鞭を執っている。このうちコンピュータ教育を担う学院が情報科学工学学院だ。ここでコンピュータサイエンス工学科の主任を務める蔺永政教授に、済南大学のコンピュータ教育について聞いた。

 

4学科で2400人が学ぶ、4年次には実践的な教育を

 情報科学工学学院には、コンピュータサイエンス工学科、電子通信工学科、ネットワーク工学科、コンピュータ公共学科の4つの学科がある。学生はそれぞれおよそ600人ずつの計2400人。大学院生はおよそ130人が在籍し、教員は全部で140人を数える。いずれの学科もソフトウェアとハードウェアの両方を取り扱う。

中国・山東省 済南市南部にある済南大学
中国・山東省 済南市南部にある済南大学

 蔺教授が在籍するコンピュータサイエンス工学科では、1年次にC言語を中心にソフトウェアの基礎を学ぶ。ソフトウェア開発では、Javaと.netを中心にAndroidやiOSなども取り扱う。2年次に専攻がコンピュータ系とインターネット系に分かれる。コンピュータ系は、ソフトウェア開発とハードウェア設計などを中心に学ぶ。インターネット系はインターネットの基礎知識とセキュリティの知識などを中心に学び、さらにJavaか.netのいずれかを選んで、それぞれ知識を深めていく。3年次にはコーディングに加え、概要設計から詳細設計など、設計法が入ってくる。ハードウェアについても、システム設計などを学んでいく。4年次には、企業でのインターンなどを通じて実践的な知識と経験を積みながら、卒論に取り組むという流れだ。

山東大学情報科学工学学院コンピュータサイエンス工学科の主任を務める蔺永政教授
山東大学情報科学工学学院コンピュータサイエンス工学科の主任を務める蔺永政教授

今秋にもAI関連専門学科を設置、サーバーの国内トップ企業と連携

 蔺 教授は「最近は、プログラミングの基礎の部分からAI開発に親和性のあるPythonも教材として使っている」と話す。実は済南大学はAI関連の教育では定評がある。現在、山東省でAI専門学科を設けているのは唯一青島大学だけだが、済南大学もこの9月の新学期開始を目指し、AI学科を設立する予定で準備を進めている。また山東省のAI関連の研究施設も済南大学に設置されている。AI関連教育は、もともと大学院生向けに展開していたが、2010年から学部生向けに拡大。2014年から本格的なAI関連教育を開始した。そして今年、中国のサーバーでトップシェアを誇るインスパーと連携して、来るべきAI時代に活躍できる人材の育成を開始する。

済南大学情報科学工学学院。卒業生は就職先でほぼ100%開発業務に
済南大学情報科学工学学院。卒業生は就職先でほぼ100%開発業務に

 済南大学情報科学工学学院の卒業生は、15~20%の学生が大学院に進学。70~80%が情報系の企業に就職する。2~3%程度が公務員になったり、海外に留学したりというかたちで、就職する学生のほぼ100%がソフトウェア開発の仕事に就いている。そこからキャリアを積んで、設計やコンサルティングなどに進んでいる事例が多い。「山東省は全国でも2番目に学生が多い省で、全部で毎年約50万人が入学している。そのなかでもコンピュータ関連の学院や学科は人気がある。就職先に事欠かないことも理由の一つだろう。入学時はコンピュータ系を選んだ目的が明確でない学生が多いが、3年生あたりから進路もみえはじめ、就職先をにらみながら実践的な勉強をしていくイメージだ」(蔺教授)。

 日本では20年に小学生へのプログラミング教育が始まるが、まだ具体的な内容は決まっていない。若年者のプログラミング教育について、蔺教授に意見を聞いた。「中国でも若年者向けプログラミング教育は始まっているが、省ごとに大きく異なっている。山東省の一部の小学校ではCの授業を行っているところもあれば、広東省・広州の中学校ではPythonの教育を始めているところもある。各地の小学校で特に多いのは、ロボットの組立てなどと組み合わせて。目に見えるかたちで教えていくカリキュラムだ」。蔺教授は、具体的でわかりやすい「モノ」が介在する教育が、子どもにとってわかりやすいのではないか、と語った。

(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)

大学対抗プログラミング世界大会で東大が金メダル――ACM-ICPC 2018 北京

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【中国・北京発】4月19日、中国・北京市で開催された「ACM-ICPC 世界大会 2018 北京」で、東京大学が11問中8問を正解して総合4位となり、金メダルを獲得した。総合1位のワールドチャンピオンはロシアのモスクワ大学(9問正解)、2位は同じくロシアのモスクワ物理工科大学(8問)、3位はホスト校の北京大学(8問)で、それぞれ金メダルを獲得した。

5時間の熱戦が繰り広げられる

 今回で42回目を数えるACM-ICPCは、大学対抗の国際プログラミングコンテスト。08年の北京オリンピックで卓球が行われた北京大学体育館を舞台に5時間の熱戦を繰り広げた。日本からは東京大学に加えて東京工業大学、筑波大学の3校が出場。東工大は5問正解して11位、つくば大は2問正解して132位と健闘し、熱い戦いを終えた。

見事金メダルに輝いた東大チーム。左から、笠浦一海さん、隈部壮さん、劉鴻志さん、コーチの金子知適准教授
見事金メダルに輝いた東大チーム。左から、笠浦一海さん、隈部壮さん、劉鴻志さん、コーチの金子知適准教授

 今年の問題はAからKまでの11問。どの問から始めるかは自由で、取り組む順番も勝敗を左右する要素になる。会場のスクリーンやネット上では、戦況を示すスコアボードを公開し、どの大学がどの問を正解したかやその時点での順位などをリアルタイムで伝えた。序盤戦は日本勢がなかなか正解できずに気をもむ場面もあった。開始42分で東大チームが問Kを一発正解したが、次の問題Fには苦戦し、5回目の提出でやっと正解した。他の上位チームが一発で正解するなか、やや手こずった印象だ。

最終盤に2問を正解してやり切った笑顔がこぼれる東大チーム
最終盤に2問を正解してやり切った笑顔がこぼれる東大チーム

 その後、2問を一発で正解し、徐々に難易度の高い問題に突入していった。残り時間が1時間を切るとスコアボードの更新が止まり、以降、どの大学がどの問題を解いたかの進捗がわからなくなる。そこからが正念場だ。

 この時点で東大チームは6問正解で総合12位。メダルが授与されるのは上位12~13チームまでで、メダル獲得のぎりぎりのポジションだった。東大の選手は、笠浦一海さん、隈部壮さん、劉鴻志さんの3人。コーチは金子知適准教授が務めた。昨年の米国大会でも銅メダルを獲得したチームだ。

 もともと終盤追い込み型で、国内予選のアジアつくば大会でも最後の1時間で逆転で優勝した。今回も終盤の追い込みに期待が高まったが、その期待に応えて最後の1時間で難問を2問立て続けに解き、総合4位まで順位をジャンプアップ、金メダル獲得にたどり着いた。表彰式の結果発表では一時東大チームがトップになる場面もあったが、ロシアや中国の強豪校には惜しくも及ばなかった。

ワールドチャンピオンに輝いて優勝カップを掲げるモスクワ大学チーム
ワールドチャンピオンに輝いて優勝カップを掲げるモスクワ大学チーム

 今年4月に就職し、今回が最後のACM-ICPC出場になった劉さんは、「僕たちのチームはもともとスロースターターで、これはどうしようもない」と謙遜するが、土壇場の集中力はピカイチ。結果がそれを証明した。

 東大チームのコーチ、金子准教授は「今年は問題の難易度がとても高かった」と振り返る。総合1位のモスクワ大学ですら全11問中正解は9問。問Cと問Jの2問はどこも正解できなかった。ICPCボードとして運営に携わる東京大学の山口利恵准教授は、「選手にとってはおそらく一生のうちで最も集中する5時間。飲食も忘れて戦う選手たちの姿を見てほしい」と話した。

会場は、08年の北京オリンピックの卓球会場だった北京大学体育館。正解するとその問題の色の風船が掲げられる
会場は、08年の北京オリンピックの卓球会場だった北京大学体育館。正解するとその問題の色の風船が掲げられる

 ACM-ICPCは、1台のパソコンを使ってプログラミングで課題を解くコンテスト。大学別の3人1チームで戦う。ニューヨークに本部を置くコンピュータの国際学会ACM(Association for Computing Machinery)が主催する。国際大会なので、コンテストの進行や問題文はすべて英語だ。問題の難易度は極めて高く、普通の大人が読んでも問題内容を理解することすら難しい。5時間の制限時間中、10から11の難題を解いていく。より多くの課題をより短い時間で解くことが求められるが、誤答やプログラムの動作が長すぎた場合などはペナルティが加算されるルールだ。

 決勝戦では、世界各国の地域予選を勝ち抜いた大学チームがしのぎを削る。今回は140校が出場した。1問正解すると、チームのブースにどの問題を正解したかを色で表す風船が掲げられ、最初に問題を正解したチームには特別の色や形の風船が掲げられる。次回、2019年大会に向けたアジア地区・日本予選は、7月6日、横浜で開催される。

 

(BCN・道越一郎)

【協賛企業通信】サンワサプライ(上) トップ交代の予定を宣言

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 PC・タブレット周辺機器メーカーのサンワサプライの山田哲也社長は4月下旬にBCNの取材に応じ、来年の2019年5月1日に社長交代して会長に就任すると語った。新社長には長男の山田和範専務が就任する予定。サンワサプライは1923年に、山田義夫氏が足袋の縫製工場・山田商工として個人創業したのが始まりで、95年の歴史をもつ企業だ。社長交代を決断した理由について聞いた。

アイデアが豊富なサンワサプライの製品
アイデアが豊富なサンワサプライの製品

 ごろ寝しながらタブレットを操作できるスタンドや、運転中の視界を遮らない車載用スマホホルダーなど、サンワサプライの製品はアイデアが豊富。なかでもガス圧式上下昇降デスクは、昨今の「働き方改革」にマッチした製品として注目アイテムだ。そんな製品が約8000アイテムもある。

 次々とユニークな製品を出し続ける山田社長は、社長交代のタイミングについて「日本の年号も変わるし、覚えやすいと思って。決算期が6月期なので5月のタイミングがよかった」と笑顔で軽くかわす。しかし、1年前から予告するだけあって、スケジュールは以前から決めていたようだ。

視界を遮らないスマートフォンホルダー
視界を遮らないスマートフォンホルダー

 山田社長は3代目。祖父である創業者が足袋の縫製工場をした後、2代目となる父親は梱包材のダンボール工場を経営した。1979年にサンワサプライに社名変更し、PCやPC周辺機器の販売を開始。NECの「PC-8801」シリーズが売れたのをきっかけに、顧客から「ケーブルがほしい」「置き台がほしい」といわれ、時代ごとに変わるニーズに応える形で成長してきた。95年12月に社長に就任し、現在の社員数297人、売上高279億円の規模の会社まで育てた。

 「PCが登場してから約30年。PCからタブレット、タブレットからスマホに移るなか、今後はアマゾンのAIによる音声認識技術Alexaに代表されるようなスマートスピーカーに変わっていくだろう。新しい流れのなかでバトンタッチした」と、従来のデジタル家電の枠を超えた大きな流れのなかで世代交代に至ったようだ。

IBMのWatsonを導入

 次世代に向けた布石も打っている。サンワサプライは2年前から社内にIBMのAIソリューションであるWatsonを導入しはじめた。まだWatsonの中小企業への導入が少なかった2年前、タイミングよく引き受けてもらうことができた。今は約8000アイテムの膨大なデータを機械学習させることで、将来のための基礎づくりをしている最中だという。

 「意外に手間がかかり、辛抱強さも求められるが、AIは資金投資をすればすぐに結果が得られるというものではない。いかに、自分流のAIに育てていくかが肝心だ。ちょうど、自動運転の技術がレベル5まで上がっていく過程にも似ている」と山田社長は語る。

 2、3年もすれば、販売会社に適正なタイミングで製品を発送したり、仕入れでの適正な発注、商品企画では8000アイテムの最適なモデルチェンジなどができるようになるとみる。Watson経由で社外のデータも取り込めば、さらに情報の精度は上がっていくという。さて、来年、会長になった山田氏は何をするのだろうか。それについては次回紹介しよう。(BCN・細田 立圭志)

【協賛企業通信】初音ミク、「超歌舞伎」で中村獅童さんと共演

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 4月28日、29日に千葉の幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2018」は、来場者数16万1277人、ネット視聴による総来場者数612万1170人(主催者のドワンゴ発表)と、どちらも前年実績の約15万4600人、505万9900人を上回り、盛況のうちに幕を閉じた。その中の目玉企画「超歌舞伎」で、クリプトン・フューチャー・メディアは、バーチャル・シンガーの初音ミクは歌舞伎俳優の中村獅童さんと共演した。

初音ミクと中村獅童さんが超歌舞伎で共演
初音ミクと中村獅童さんが超歌舞伎で共演

 「超歌舞伎」は「ニコニコ超会議2016」で初披露し、今回で3回目となる。上演した演目は、「積思花顔競 -祝春超歌舞伎賑-(つもるおもいはなのかおみせ -またくるはるちょうかぶきのにぎわい-)」。歌舞伎ファンにはなじみの深い顔見世舞踊の大作「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」から着想を得た新作だ。

 「積思花顔競」の見どころは、中村獅童さんとは初音ミクがそれぞれ2役を演じたところ。中村獅童さんは、初の悪人役となる平安時代初期に実在した惟喬親王(これたかしんのう)と敵対する良岑安貞(よしみねやすさだ)、初音ミクは、安貞の許嫁である小野初音姫(おののはつねひめ)と白鷺の精霊のそれぞれ2役を演じた。

「超歌舞伎 Supported by NTT」として上演して今回で3回目となる
「超歌舞伎 Supported by NTT」として上演して今回で3回目となる

 惟喬親王は、文徳天皇の皇子のひとり。異母兄弟に惟仁親王(これひとしんのう)がいて、その外祖父が藤原良房であったことから、惟仁親王が皇位を継承し清和天皇となった。歌舞伎では古くから、惟喬親王と惟仁親王が帝の位を巡って争った物語が数々作られ、作品の中では必ず惟喬親王が悪人として、惟仁親王が善人として描かれてきた。また、ヒロインとして絶世の美女といわれた小野小町がしばしば登場し、今回の「積思花顔競」では、初音ミク演じる小野初音姫は小町の娘という設定だった。

 冒頭に上演した「お祭り」をもとにした超所作事「祝春超歌舞伎賑」でも、初音ミクと中村獅童さんが共演し、3年目を迎える超歌舞伎を祝った。

 超歌舞伎は、NTTによる遠隔地の空間情報を高い臨場感で伝送するイマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」を駆使した演出など、最新テクノロジーと古典歌舞伎が融合した作品として、毎年、来場者を魅了している。

【協賛企業通信】サンワサプライ(下) 岡山に航空宇宙産業を

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 PCやタブレット周辺機器メーカーのサンワサプライの山田哲也社長は、2019年5月1日に長男で専務の山田和範氏に社長を交代する計画だ。会長に就任する山田社長は、今後の成長分野である「航空宇宙産業」に着目し、地元、岡山の新たな産業に育成しようと活動している。

岡山市にあるサンワサプライの本社
岡山市にあるサンワサプライの本社

身近になった航空宇宙産業

 実は山田社長は30年前から、航空宇宙産業を事業として立ち上げたいという思いを強くもっていた。その当時に登録した「サンワスペースインダストリー」という会社名は、今も残っている。

 かつては、大手重工メーカーや一部の国の事業団体しか手を出せなかった宇宙産業だが、ここにきてソニーが宇宙ビジネスに参入すると報じられたり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと一緒に参画したキヤノン電子の民生部品をつかった世界最小ロケットが打ち上げに成功したりと、民間企業に身近な存在になりつつある。関連するベンチャーも次々と生まれている。

 「通信が5Gになって低軌道の衛星が600個ぐらい上がるようになれば、よりビジネスは具体的になるだろう」と山田社長は読む。同じ文脈で、ドローン関連の商品や、ドローンの操縦訓練を行う学校、そのための運用スペースの確保など、新規のビジネスが創出されていくという。

 そんななか、山田社長は17年11月27日、サンワサプライの本社がある岡山県倉敷市で、市長や商工会議所のメンバー、有力企業を巻き込んで「MASC(岡山県倉敷市水島地域への航空宇宙産業クラスターの実現に向けた研究会)」を立ち上げ、副理事長として具体的なアクションを起こしている。

 合言葉は“SPACE is OPEN”。「今、地上にある仕事の量を考えても、宇宙はまったくの空白地帯。ビジネスチャンスは大きい。『皆さん、速く手を挙げた方がいいですよ』と声掛けしながら、MASCを立ち上げた」と研究会設立の経緯を語る山田社長。社長自身、国内外の宇宙関連の展示会に参加したり、ベンチャーを直接訪問したりしている。業績が好調な企業ほど、航空宇宙産業に寄せる期待が大きかったという。

「MASC」の合言葉は「SPACE is OPEN」
「MASC」の合言葉は「SPACE is OPEN」

航空機をつくるDNAが残っている

 MASCは昨年11月に設立総会と勉強を立ち上げ、つい先日の4月28日には岡山市立美術館の講堂で第1回「航空宇宙ビジネスフォーラム」を開催。地元企業による宇宙産業の将来性や可能性について研究した。

 MASCの活動は、山田社長が生まれ育った岡山に、将来性のある新しい産業を根付かせたいという思いもある。「岡山は繊維産業や農業などが強いが、もうひとつ将来が見込める大きな事業をつくりたい」と熱く語る。

 倉敷と宇宙は、縁遠い存在でもない。倉敷市の水島には、終戦近くの1943年に三菱重工業の水島航空機製作所が設立され、70年に今の三菱自動車工業の水島製作所になっている。「倉敷には航空機をつくるDNAが残っていて、それを引き継げたらいいと思う」と山田社長は語る。

 サンワサプライが手掛ける事業との関連性は今のところ薄いが、航空宇宙の関連機器が出てくると、通信やコンピューティングで培った知見が活かせ、ビジネスの可能性は一気に膨らむだろう。山田社長は、会長になってからも、相変わらず忙しく飛び回っていそうだ。(BCN・細田 立圭志)

中国プログラミング教育最前線(6) 山東師範大学情報科学行程学院

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 山東省済南市にある山東師範大学は、山東省でもトップレベルの総合大学だ。約3万7000人の学生と約2400人の教員を擁し、教員養成を主眼とする。元情報科学工程学院院長で現在情報技術局長を務める劉方愛先生に、プログラミング教育の現状を聞いた。

教員育成と即戦力技術者の養成を目指す

 山東師範大学は、1984年にコンピュータ系専門学科を開設。1995年には、情報センターと情報専門学科をまとめて情報科学行程学院を設置した。現在は、主にプログラミングを教えるコンピュータ・サイエンス学課、IoTなどのハードウェアを含む通信学課、そして、大学全体の学生を対象にコンピュータの基礎を教える教育学課の三つのコースに分かれている。情報科学行程学院の学生は現在1855人で、大学院生が238人。博士課程に30人が所属している。教員は全部で95人で、うち教授が16人、副教授が27人、博士が9人という陣容だ。

山東省済南市の観光名所でもある千仏山にほど近い千仏山校区にある山東師範大学の情報科学行程学院。正面に立つ大きな毛沢東像がキャンパスのシンボルだ
山東省済南市の観光名所でもある千仏山にほど近い千仏山校区にある山東師範大学の情報科学行程学院。正面に立つ大きな毛沢東像がキャンパスのシンボルだ

 情報科学行程学院のコンピュータ教育は、大きく分けて二通りの人材育成を目指している。一つは教師の育成で、これは師範大学の性格上、欠かせない要素だ。もう一つは、卒業後即戦力として働くことができる応用型人材の育成だ。教師の育成については、理論と技術基礎を重視。学卒で教師になる数は少なく、院卒から教師になる例が大半という。

 即戦力の応用型人材の育成では、ハードやソフトの技術研究を通じて得た深い理論的な知識をバックボーンに、就職時に力を発揮できる教育に力を入れている。ソフトウェア開発や、主に日本向けアウトソーシング開発の対応などのついても教育する。とくに山東省にある中国を代表するサーバーベンダー、浪潮(insper)と連携して、「2+2」のカリキュラムを組んでいる。これは、大学で2年間基礎知識を勉強した後、2年間会社でインターンとして働くことで、より実践的な人材育成を行う取り組みだ。

山東師範大学情報科学行程学院の劉方愛情報技術局長
山東師範大学情報科学行程学院の劉方愛情報技術局長

プログラミングコンテスト入賞で給料が2倍の事例も

 学生は、入学1年目は学科に分かれず、英語や哲学など教養学課とあわせて等しくコンピュータの基礎知識を学ぶ。ここでは、ソフトウェア設計や数学、データベース構造、電子工学などの基礎を身につけていく。コンピュータ言語はCとJAVAが中心だ。2年目からは、前述のコンピュータ・サイエンス、通信、教育の三つの学課に分かれて専門知識を深めていく。師範大学だけあって、最も人気があるのは教育学科。コンピュータの教師を目指す女子学生の比率が高い。各学科ともに定員が定められているので、1年次の成績によっては希望の学課に進むことができないケースがあるのは、日本の大学と同じだ。

 3年、4年と進むにつれて、それぞれの学課でより実践的な内容に深化していき、Oracle、Pythonなどが加わっていく。4年生になると、半年ほど企業のインターンや学校での教育実習を通じて実践力を高め、卒業設計などに入っていく。大学院に進むのは3割ほどで、教員志望が多い。残りの6~7割が学卒で企業に就職する。うち8~9割はIT系の企業か、一般企業のIT部門に就職できているようだ。大学で勉強したことが直接、間接に役立つ環境だ。

 情報科学行程学院の学生が参加するプログラミングなどのコンテストには、毎年11月に表彰式が行われる「山東省大学生ソフトウェア設計コンテスト」を筆頭に、「挑戦杯」や世界大会のACM-ICPCなどがある。山東師範大学は、これまでアジア大会で金メダルを獲得した実績がある。このほか、中国全土を対象とした「インターネットプラス」など、ネットワーク関連のコンテストも人気だという。コンテストを目指す学生には、実験室を開放したり、指導教員をつけたりと、サポート体制は整っている。学生が入賞すれば教師にも奨励金が入ることもあって、指導にも熱が入る。学生にとってもメリットは大きく、入賞すると、大学院の入試が免除されることがある。就職にも有利で、就職後に給料が倍になる例もあるという。人気の分野は、スマホアプリの開発やIoT、ビッグデータ分析などだ。

情報科学行程学院が入る校舎。歴史を感じさせる建物が多い
情報科学行程学院が入る校舎。歴史を感じさせる建物が多い

 2020年から日本の小学校で始まるプログラミング教育。最大の課題は指導者の養成だろう。山東師範大学で長年教鞭を執ってきた劉先生に、どうすれば教員を確保できるかについて聞いた。まず、大学の教員については「先生は基礎理論や知識を重視しなければならない。それをしっかり学生に教えることが基本になる。ただ、学校はIoTやAI、ビッグデータなどの先端技術はほとんどもっていない。もっているのは企業だ。産学連携で学校から人材を送るなど、企業と連携しながら教育していく必要がある」と話す。

 小学生などの子どもへのプログラミング教育については、「最近は、山東省内の小中学校の授業にロボットやAIなどの要素が少しずつ入るようになってきた。特にロボットのように、かたちのあるモノをうまく使って子どもたちの興味を引き、教育に結びつけていくのが効果的ではないか」と話してくれた。「もし教員が不足するなら、政策として外国からコンピュータの先生を招くことも考える必要があるのではないか」という提案もいただいた。

(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)

中国プログラミング教育最前線(7)山東商業職業技術学院

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 山東商業職業技術学院は、山東大学のような「本科」に次ぐ位置づけの大学専科高等教育機関だ。学術研究などを幅広く行う本科に対し、専科はより実践的な教育を通じて即戦力を養成する機能をもつ。ここでコンピュータ教育を行っている情報・芸術学院の朱旭剛 副院長に、コンピュータ教育の現状を聞いた。

本科に負けない実践力を養成する情報・芸術学院

 山東商業職業技術学院は、およそ1万5000人の学生を擁し、山東省の専科大学のなかではナンバーワンの実績を誇る。中国政府が定めるモデル校100校のうちの一つで、他の大学に先だってさまざまな実験的な教育などを行っている。また、山東省で16件が認定されている中国優秀校のうちの一つでもある。

済南市中心部からやや東の旅遊路にある山東商業職業技術学院
済南市中心部からやや東の旅遊路にある山東商業職業技術学院

 会計・金融や商業関連の学院に所属する学生が最も多い。そのなかで情報系の教育を担うのが、情報・芸術学院だ。学生は約2500人で、教員は約80人。山東省にある情報系の専科大学ではトップクラスに位置づけられる。昨年開かれた中国職業技能大会では、電子情報関連の情報セキュリティ、モバイルソフト開発、ソフトウェア試験の4部門で金メダルを獲得し、一昨年の2個から倍増となった。山谷はあるものの、学生の質は年々向上している。

IoTなどのハードが絡む学院とソフトと芸術系の学院に分割

 以前は電子情報学院としてハードウェア、ソフトウェアの両方を教えていたが、昨年末に情報系の学院を再編成。情報・芸術学院がソフトウェア系として再出発した。応用電子やIoTといったハードウェアに絡む部分は、スマート製造・サービス学院が担当することになった。ソフトウェア系の情報・芸術学院には、ソフトウエアテクノロジ、クラウドコンピューティング、ビッグデータ応用技術、ネットワーク技術、コンピュータ応用技術などのほか、芸術系のデジタルメディア関連、建築専攻がある。

山東商業職業技術学院 情報・芸術学院の朱旭剛副院長
山東商業職業技術学院 情報・芸術学院の朱旭剛副院長

 情報系にこうしたメディア関連や建築専攻が含まれることについて、朱副院長は「本科と違って技術や技能の習得に力を入れており、理論だけではなく実践に即した教育を行っている。例えば、汎用のソフトウェアに関して本科の大学と競争すると比べものにならないが、ソフトウェアと建築と結びつくような実践的な課題に関して強みが出てくる」と話す。

 現在、特に力を入れているのは、開発系ではウェブとモバイルのアプリケーション。言語ではJAVA、HTML5などだ。モバイル系OSでは、以前はiOSに力を入れていたが、今はAndroidに軸足が移ってきたという。どちらも必要だが、限られた時間で取り組むには、今後ユーザーの拡大が見込まれるAndroidを、と考えているからだ。また、クラウドコンピューティングにも力を入れている。前述のモデル校として国から5000万元、山東省から200万元と計700万元の資金を得て、全国の職業大学で活用できるように学生向けの教育用のコンテンツ制作も行っている。

 全部で3年間の課程のうち、1年生では基礎知識を学び。2年生からそれぞれの専攻に進んでいく。最終年度の3年生になると、インターンとして企業で実践的な業務を身につける。そして、多くの学生はそのままインターン先の企業に就職するという。

情報・芸術学院は情報系と芸術系の連携が強み
情報・芸術学院は情報系と芸術系の連携が強み

 ウェブアプリケーションの開発が専門の朱副院長は、実践的な技術を身につけさせる目的もあって、学生と一緒にシステム開発を行っている。最近では、ウイチャットのアプリケーションとして、大学で利用する実習管理システムを開発した。これは先生と学生のコミュニケーションを円滑にするアプリで、どんな実習をどこでやっているかをリアルタイムで把握でき、先生から学生への指示もアプリを通じて行うことができる。

先生はコーチのようなもの。実際の開発で実践力を身につける

 朱副院長は、「学生と一緒にアプリケーション開発をしながら、不具合を一つひとつ修正していく経験を通じて、企業での業務に即した力が身についていく。先生はコーチのような存在だ」と話す。卒業後の進路については、「開発だけではなく、アフターサービスやメンテナンス、販売なども含む広い意味でのソフト関連の仕事に就いている卒業生が6~7割程度」だという。なかには会社を設立して、朱副主任の開発したソフトのメンテナンスを請け負っている卒業生もいるという。

 数年前までは、NECソフトウェアの依頼を受けて、クラス全員でソフトウェア開発をしていたという。日本語の講座もあった。しかし、この2~3年は、こうした対日アウトソーシング業務を意識したカリキュラムは消えてしまった。朱副院長は「くわしい理由はよくわからないが、今後もリクエストがあれば、要望に添った人を育成する」と話した。

朱副院長(左)と筆者
朱副院長(左)と筆者

 日本で2020年に始まる小学生向けのプログラミング教育について意見を聞くと、朱副院長は「子どもたちへのプログラミング教育については、アメリカが進んでいる。MIT(マサチューセッツ工科大学)などでもさまざまな試みが行われているので、それが参考になる。やはり、眼で見て、わかりやすいことが大事だ。例えば、ロボットを使って子どもの好奇心を高めながら、自分でやりたいことを実現できる環境を用意するのがいいと思う」と話してくれた。

(BCN・道越一郎)


U-16プロコン札幌大会、OSC 2018北海道でお披露目

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 7月6・7日の2日間、北海道札幌市の札幌コンベンションセンターで、オープンソースカンファレンス 2018 北海道(主催:オープンソースカンファレンス実行委員会)が開催された。北海道のU-16プログラミングコンテスト実行委員会は、昨年に続いてセミナーと展示で同志を募った。

コミュニティが支える北海道のU-16プロコン

 毎年、全国各地で開催されているオープンソースカンファレンス(OSC)のなかでも、北海道のOSCは東京に次ぐ規模を誇るオープンソースのお祭りだ。今年は66のコミュニティが参加し、70を超える展示ブースと50本のセミナーで来場者に「オープンソースのいま」を伝えた。

 北海道のU-16プログラミングコンテスト実行委員会は、現在、道内で大会を開催している旭川、釧路、帯広の有志のほか、道内各地域の技術系コミュニティ活動を支援する一般社団法人LOCALのメンバー有志で組織される。実行委員会やコミュニティのメンバーは重複参加者がほとんどで、連携の強さを感じさせる。昨年のOSC2017北海道で初めて「U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)」をテーマに行ったセミナーは、今年は10月28日に第1回を開催する札幌大会を前面に押し出しながら、大会の意義や競技部門で使用するゲーミングプラットフォーム「CHaser」の解説、デモンストレーションなどを行った。

U-16プロコン札幌大会実行委員長の八巻正行さん
U-16プロコン札幌大会実行委員長の八巻正行さん

 講師は、U-16プロコン札幌大会実行委員長を務める八巻正行さん。30人を超えるセミナー参加者を前に、旭川市で8年前に始まったU-16プロコンの歩みを簡単に紹介した後、開催の意義の一つとして、「PCが好きな子どもたちに、夢や目標となる場所を提供する。好きだけれど、何をやればいいかわからない子どもの目標になればいい。そんな子どもを『PCが好きな消費者』で終わらせてはいけない」と、プログラミング修得の入口として、すそ野を広げていく活動であることを挙げた。

 また、プログラミングを学ぶ高校生・高等専門学校生が16歳以下の後輩たちを直接指導していくことでともに成長するだけでなく、そこから生まれる「縦のつながり」や、同世代の子どもたちが集まって学校の垣根を越えて切磋琢磨し、交流することで生まれる「横のつながり」を強調。なかでも、「子どもがプログラミングをやることがえらい、のではない。大人と同じ道具・手法でプログラミングを実践する子どもたちをわれわれが一人のプログラマとして認め、向き合うことで、さらなる自信と向上心をもってもらいたい。それが、情報技術を通じての子どもたちの健全育成や将来のITエンジニア育成につながる」という言葉が印象に残った。

10月28日、札幌コンベンションセンターで開催

 大会の説明と「CHaser」の解説の後は、競技部門のデモンストレーションとして、2016年の旭川・北海道大会で優勝した中学3年生による「歴代最強プログラム」と、3人の大人たちがそれぞれつくったプログラムがトーナメント形式で対戦した。決勝戦は、U-16プロコンの生みの親の一人による高度なロジックを駆使したプログラムに対して、オーソドックスな手法を積み重ねて綿密に組み立てた「歴代最強プログラム」が勝利した。対戦中は会場から声が上がるなど、セミナー参加者の反応は上々。北海道情報専門学校の学生がイラストを描いた札幌大会のチラシを手に、八卷実行委員長はPRに余念がなかった。今後、コンテストに参加する中学生を集めた事前講習会の準備に取りかかる。

大人大会は中学生の「歴代最強プログラム」が勝利
大人大会は中学生の「歴代最強プログラム」が勝利

 第1回U-16プログラミングコンテスト札幌大会は、札幌の街を挙げてのIT・カルチャーイベントである「No Maps」のイベントの一つとして子どもたちにさまざまなプログラミング体験を提供する「ジュニア・プログラミング・ワールド2018 with TEPIA」と同時に開催する。10月28日午前10時、札幌コンベンションセンターに集まる子どもたちの目の輝きが楽しみだ。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)

長野市でU-15プロコン開催へ、事前講習会に33人が参加

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 長野市は、ITジュニア育成施策の一環として、市内の小・中学生を対象にした第1回U-15長野プログラミングコンテスト(U-15長野プロコン)を10月27日に開催する。これに向けて、7月21・22日にはプログラミングの基礎を学ぶ事前講習会を長野商工会議所で実施。定員の30人をはるかに超える90以上の問い合わせがあり、申し込みは60人を超えたが、今回は先着順で小学校4年生から中学校3年生の33人が参加した。この講習を踏まえて、8月5日には参加者の質問や疑問に答えるための事前講習会を実施する。

いまの長野市をつくる大人たちと未来の長野市をつくる子どもたち。プレートを持つのは、左から大会実行委員長を務める堀内征治高専プロコン交流育成協会理事長、マウスコンピューターの小松永門社長、加藤久雄長野市長、大会長の北村正博長野商工会議所会頭
いまの長野市をつくる大人たちと未来の長野市をつくる子どもたち。プレートを持つのは、左から大会実行委員長を務める堀内征治高専プロコン交流育成協会理事長、マウスコンピューターの小松永門社長、加藤久雄長野市長、大会長の北村正博長野商工会議所会頭

U-16プロコン旭川大会の視察で開催の決意を固める

 U-15長野プロコン開催のきっかけは、長野商工会議所の北村正博会頭が、昨年11月、北海道旭川市のU-16プロコン旭川大会を視察し、感銘を受けたことだった。自分でつくったプログラム同士が対戦型ゲームで競い合い、子どもたちが大いに盛り上がっていたことや、地元の旭川工業高等専門学校・旭川工業高校の学生・生徒たちが先生役になって、夏休みから秋まで、小・中学生にプログラムを教えていたこと、さらにこれを支える大人たちが一体となってITジュニア育成を目指す取り組みを肌で実感した。長野市の子どもたちも、将来、地元の産業で活躍してもらいたい――そんな願いを長野に持ち帰り、大会開催に向けて奔走した。

 その甲斐あって、4月に結成したU-15長野プログラミングコンテスト実行委員会には、趣旨に賛同した長野市教育委員会、長野市ICT産業協議会、長野市商工観光部のほか、信州大学、長野工業高等専門学校、長野工業高校が集った。この産官学が一体となった強力な布陣で準備がスタートし、7月の事前講習会開催にこぎ着けた。

33人の小・中学生が参加。親子連れが目立った
33人の小・中学生が参加。親子連れが目立った

 事前講習会の開講式の冒頭、大会長を務める北村会頭は、「少子化によってどの企業でも人手不足が続き、その解消のためにIT化を図っている。ITの力はすごい。子どもたちには、今回のプログラミング学習を通じて、論理的思考力や創造力を伸ばしてほしい」と挨拶した。

 事前講習会の準備で一番苦労したのが、参加する子どもたちが使う30台のパソコンの準備だった。「参加者の持ち込みや、中古パソコンの調達、レンタルなどを考えたが、縁があってマウスコンピューターの小松永門社長にお願いすることができた」と北村会頭。

 マウスコンピューターは、長野県にパソコンの生産拠点を置く地元ゆかりの企業だ。開講式では、そのマウスコンピューターから長野市に Windows10を搭載した14型ノートパソコン31台を寄贈する贈呈式が行われ、加藤久雄長野市長からマウスコンピューターの小松社長に感謝状が手渡された。

 加藤市長は、「長野市のITジュニア育成をご支援いただき感謝する。ICT人材の教育は非常に重要であり、産官学を挙げて取り組んで行く。子どもたちには10月の大会で大いに活躍してほしい」と述べ、小松社長は「マウスコンピューターは飯山市と長野市でパソコンを製造している。皆さんに今回使ってもらうパソコンはMade In 長野市だ。今日の講習を通じてパソコンを好きになって、学校でもITの先駆者として活躍してほしい」と、子どもたちに応援のメッセージを送った。

講師は地元IT企業の若手、15人の学生・生徒がチューターに

 事前講習会の講師は、地元のIT企業に勤める大森渉さんと小林裕さん。プログラミングのイロハから始めて、実際にパソコンを操作して演習問題に取り組むときには、信州大学と長野高専、長野工業高校の学生・生徒、計15人がチューターとして参加者の横について指導する「子どもが子どもに教える」という旭川モデルを踏襲した。

4時間にわたる講義でも子どもたちは高い集中力を発揮
4時間にわたる講義でも子どもたちは高い集中力を発揮

 休憩をはさみながらの4時間、子どもたちは高い集中力で講義を聞き、テキストを見ながらパソコン操作を繰り返す。教わる子どもが成長すると同時に、質問攻めにあうチューター――学生・生徒も成長する。いっしょに画面を見ながらプログラミングを進める子どもたちとチューターたちを見ていると、10月の大会がさらに楽しみになってくる。

学ぶ側と教える側がともに成長する
学ぶ側と教える側がともに成長する

 第1回U-15長野プログラミングコンテストは、10月27日、長野市ビッグハットで開かれる地域最大級の多業種総合展示会「産業フェアin信州 2018」のメイン会場で開催する。1998年、長野オリンピックのアイスホッケー会場だったこの場所で、この秋には子どもたちがプログラミングで熱戦を繰り広げる。

(文:ITジュニア育成交流協会 江守譲/写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

【寄稿】U-16釧路大会で新たな試み、説明会&体験会を開催!

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釧路工業高等専門学校 電子情報システム工学専攻1年(プログラミング研究会所属)
寺地 海渡

 

 U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)釧路大会実行委員会は、7月7・8日の2日間、北海道釧路市の釧路工業高等専門学校(釧路高専)で、10月14日の本大会に向けた説明会&体験会を開いた。これまでも事前講習会は開催してきたが、それに先立つかたちで、まずは子どもたちコンピュータに触れてもらおう、プログラミングに親しんでもらおうという新たな試みだ。

チューターだけでなく講師もプロ研の学生が担当
チューターだけでなく講師もプロ研の学生が担当

シンプルだが奥が深いプログラム

 釧路大会は、ゲーミングプラットフォーム「CHaser旭川版」で、自分のキャラクタの動きを制御する自律型プログラムを参加者が事前に作成し、それを持ち寄って行う。ゲームは、法則性のあるフィールド上を定められた手数内に「縦横に移動する」「周囲を探索する」命令を交互に発行してキャラクタを動かして進行する。勝負は、「相手キャラクタより多くのアイテムを収集して高得点を獲得する」「隣接する相手キャラクタの上にブロックを置く」「相手キャラクタの四方がふさがって移動できなくなる」「相手キャラクタがブロックに突っ込む」ことで勝つことができる。

 プログラミングで発行できる命令は4種類だけで、それを上下左右4方向のどれに向かって実行するか、4×4のわずか16通りの動作しかない。これだけシンプルでも、プログラム中で自分のキャラクタの行動を決定するのは難しく、奥が深い。高度な自律プログラムをつくろうと思うと、大人でも知恵を絞り出さなければならない。大会で試合が始まってしまえば、参加者は自分のつくったプログラムが動作するさまを見守るほかなく、プログラミングした本人も勝負の行方に手に汗を握ることになる。

 釧路大会では、以前から参加者のバックアップを釧路高専のプログラミング研究会(プロ研)と釧路OSSコミュニティが協力して、参加者向けの事前講習会を開いてきた。今年はさらに説明会&体験会として、参加機会を増やし、門戸を広げるチャレンジに取り組んだ。

 昨年の北海道大会(旭川市)の直後、第6回釧路大会に向けて、プロ研内部で反省会を行った。全道大会ではわれわれのサポートが及ばず、釧路から出場した選手たちは満足行く結果を残せなかった。全道大会参加者からは、「次は勝ちたい」という言葉をもらい、プロ研では次回大会の準備に取り組んだ。昨年の大会では、参加者のプログラムの読解と修正などに盛大に時間を溶かした経験がある。指導する人によってプログラムの構成が異なり、そこに参加者の自主性が加わった結果、参加者の意図をプログラムから読み取ることは困難を極めた。事実、リファクタリングとバグ修正のために参加者から預かったプログラムを持ち帰って、徹夜でなんとか修正した。

指導はほぼマンツーマンの体制
指導はほぼマンツーマンの体制

 同じ轍は踏まない。今年は参加者をどのように指導するか、あらかじめ細部にわたって決定し、全員が共通の指導方法でプログラミングを教えるようにして、指導要綱と指導指南書を作成した。これによって指導者同士の意思疎通が図りやすくなり、誰が指導しても同じ品質のプログラムができて、参加者のプログラムのリファクタリングが容易になった。説明会&体験会の参加者は、2日間合わせて12人。予定していた指導方針が功を奏し、さらには指導の到達目標となるサンプルプログラムも作成してあったので、昨年以上の指導効果が現れたと自負している。それでも、参加者の理解を深めながら、時間内に目標に到達することの難しさに、個人的には教育者の苦労を多分に味わっているつもりでいる。ちょっと大げさかもしれないが、義務教育課程にこのまま情報教育を導入したときに現れる問題と同質のことなのではないだろうか。参加者からは、「難しい」「複雑」「頭痛い」「ものたりない」と大変好評(?)だった。一度で覚えられるとは思ってないので、これからも「かかってこいや」という気概をもって、次の講習に向けて振り返りと準備に取り組んでいる。

「プログラミングが強い釧路勢とプロ研」になる

 プロ研が指導する際に強みになっているのは、指導側に過去大会の参加者がいることだ。私のようなただ指導するだけの人間と大会参加経験がある指導者の最大の差は、参加者である小・中学生が実際にプログラミングをするときにどこでつまずき、どこで理解が進まなくなるのか、実体験を伴って把握できる点にある。過去大会に参加したプロ研会長の篠田裕人君や副会長の加藤楓志君は、この講習会で得られたデータをもとに講習会の進行マニュアルやリファレンスを作成し、次回以降の講習会をさらに円滑に進める準備を進めている。また、今大会にはプロ研会員の1年生を参加させている。これは、次回大会以降、指導者になるための準備をしてもらうことと、指導者が指導法を研究する際の被験者などになってもらい、「プログラミングが強い釧路勢とプロ研」になるためだ。

 説明会&体験会や事前講習会に参加する小・中学生は、今大会で初めてプログラミングに触れる子どもが少なくない。そんな子どもが「CHaser」の競技性、つまり言語的制約以外のルールに則った自律プログラムをつくらねばならないのは、ある種、高い壁だといえる。しかし、いきなりプログラミングの本質を捉えようとしていることは、難しさもあるが間違いなく貴重な経験として子どもたちの挑戦を促すだろう。一方で、教えているわれわれの技量が問われ、指導者も成長する貴重な機会でもある。釧路大会を動かしているわれわれとしては、高校1年生までの参加者がもっと増えてもらいたいと思っている。またO-16(16歳超)の方々には、釧路大会に限らず、これからも子どもたちがプログラミングを楽しむ機会づくりにぜひともご協力いただきたい。子どもたちには、「CHaser」を通じてプログラミングの本質とものづくりの楽しさをぜひ堪能してもらいたい。

 釧路大会まで残り3か月。我々はどこまで導くことができるか。参加者はどこまで成長できるか。波乱万丈のステージの幕開けである。

(写真:斉藤 和芳/構成:ITジュニア育成交流協会)

和歌山にU-16プロコン、田辺工業高校で事前講習会を開催

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 7月24・25日の2日間にわたって、和歌山県田辺市の県立田辺工業高校で、第1回U-16プログラミングコンテスト和歌山大会事前講習会が田辺工業高校の地域連携講座として開催された。本大会は11月23日、田辺工業高校で開催される。

「ふだんコンピュータに触ってはいるが、プログラミングは初めて」という中学生が多かった
「ふだんコンピュータに触ってはいるが、プログラミングは初めて」という中学生が多かった

「ぼくたちもおちおちしていられない」と指導する高校生

 田辺市でのU-16プログラミングコンテスト開催は、かつて田辺工業高校の校長だった平松芳民さんがU-16プロコンの存在を知り、「子どもたちの未来をつくる」という趣旨に賛同して現在の教諭陣に働きかけて実現。5月に三角雅彦校長が開催へのゴーサインを出すと、現場では機械科の阪本貴弘教諭、情報システム科の尾花敦科長、電気電子科の竹居栄治教諭が準備を整え、開催に向けて歩み出した。U-16プロコン旭川大会実行委員会からゲーミングプラットフォーム「CHaser旭川版」のプログラムや指導資料の提供を受けながら、地元の中学校を訪問して参加者を募った。

 7月24・25日の事前講習会に参加したのは、市内3中学の1~3年生、男子10人、女子10人の計20人。講師は電気電子科の竹居栄治教諭が務め、プログラミングを学ぶコンピュータ応用部の生徒4人と開催を知って自ら手を挙げた1人の計5人がチューターとなって指導した。参加者は、1日目はプログラミングの基礎と「CHaser」のキャラクタの動かし方を学び、2日目は自分の書いたプログラムをブラッシュアップするかたちで大会への道程をスタートした。なお、11月23日の大会には、事前講習会に参加しなかった子どもでも出場できる。

田辺工業高校の生徒5人が中学生たちの間を回って指導
田辺工業高校の生徒5人が中学生たちの間を回って指導
左から機械科の阪本貴弘教諭、三角雅彦校長、電気電子科の竹居栄治教諭、情報システム科の尾花敦科長
左から機械科の阪本貴弘教諭、三角雅彦校長、電気電子科の竹居栄治教諭、情報システム科の尾花敦科長

 平松さんのほか、参加する中学校の先生や父兄、ITジュニア育成交流協会の協賛企業で白浜町に本社を置くクオリティソフトからも2人が駆けつけ、中学生の学ぶ姿を見守った。指導した高校生の一人からは、「吸収力もすごいけれど、そもそも中学生でプログラミングを勉強しようとする姿勢に驚いた。ぼくたちもおちおちしていられない」という声が上がり、指導する側にも触発されるものがあったようだ。

U-16プロコンは指導される側と指導する側がともに成長する
U-16プロコンは指導される側と指導する側がともに成長する

 開催に向けて尽力した阪本教諭は、「事前講習会に参加した子どもたちのプログラミング学習を大会までどのようにフォローしていくか、また実際に大会運営をどのように行っていくのか、考えなければ行けないことは多いが、この子どもたちが参加してくるのだと思うと身が引き締まる」と、手応えを話してくれた。第1回U-16プログラミングコンテスト和歌山大会は、11月23日、田辺工業高校で開催される。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

第13回若年者ものづくり、電子回路組立ては松山工業の石田さんが金賞

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 8月1・2日、石川県金沢市などで、厚生労働省と中央職業能力開発協会が主催する若年者ものづくり競技大会が開催された。BCN ITジュニア賞の対象コンテストの一つ、電子回路組立て職種は、愛媛県立松山工業高校の石田有希人さんが金賞/厚生労働大臣賞に輝いた。

会場の金沢市の石川県産業展示館。さまざまな職種が同じ会場で技能を競う
会場の金沢市の石川県産業展示館。さまざまな職種が同じ会場で技能を競う

昨年の雪辱を果たした石田さん、反省しながら前を向く

 若年者ものづくり競技大会は、メカトロニクス、 機械製図(CAD)、旋盤、フライス盤、電子回路組立て、電気工事、木材加工、建築大工、自動車整備、ITネットワークシステム管理、ウェブデザイン、業務用ITソフトウェア・ソリューションズ、グラフィックデザイン、ロボットソフト組込み、造園という15の職種で、職業能力開発施設や工業高校などで技能を習得中の企業などに就業していない20歳以下の若年者が技能を競う大会だ。

 15職種のうち電子回路組立てはBCN ITジュニア賞の対象コンテストの一つで、毎年、金賞/厚生労働大臣賞受賞者を1月の表彰式に招待している。今年は
各地の職業能力大学校・短期大学の学生と、全国各ブロックを勝ち抜いた高校生、計29人が出場した、競技では、各選手が4時間の競技時間内に仕様書にもとづいて組立て基板を製作し、これを制御するプログラムを書いて組込み技術を競う。組立て基板の製作では部品の取りつけ方やハンダの盛り方、制御プログラムの制作では仕様書通りに動作するかをみて、さらに服装や作業態度も審査して順位がつけられる。午後早い時間に競技は終了するが、厳正な審査を行うために順位の発表は翌日の昼過ぎになるというのが通例だ。

 今年の電子回路組立ては、高校2年生だった昨年の大会で惜しくも銀賞だった松山工業高校の石田有希人さんが雪辱を果たして金賞/厚生労働大臣賞を受賞。銀賞は該当者がなく、愛知県立愛知総合工科高校専攻科の安江柾寛さん、北海道旭川工業高校の鎌田聖士さん、近畿職業能力開発大学校の松下拓磨さんの3人が銅賞に輝いた。

金賞/厚生労働大臣賞に輝いた愛媛県立松山工業高校の石田有希人さん
金賞/厚生労働大臣賞に輝いた愛媛県立松山工業高校の石田有希人さん

 金賞/厚生労働大臣賞の石田さんは、序盤の組立て基板の製作でややつまずいたものの、後半得意のプログラミングで挽回し、競技時間40分ほどを残して作業を終了。確認作業を行って作品を提出した。つまずきを反省して、コメントは「ミスがあって、実力の100%を出すことができたとはいえない。次の高校生ものづくりコンテスト全国大会では、この経験を生かして頑張りたい」。自己採点はやや辛めだった。石田さんが挙げた高校生ものづくり全国大会の電子回路組立も、BCN ITジュニア賞対象コンテストの一つ。昨年は石田さんが制し、BCN ITジュニア賞2018を受賞している。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

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