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【寄稿】U-16プロコン、帯広でも始まる!

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北海道旭川工業高校 情報技術科教諭

 

下村幸広

 

 

昨年の全道大会開催がきっかけに

 2011年9月、旭川で始まったU-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)。2013年に釧路に飛び火し、さらに今年は北海道帯広市が3番目の開催地となった。「第1回U-16プログラミングコンテスト帯広大会」である。実は昨年、帯広市に旭川大会と釧路大会の上位入賞者が集まり、北海道大会を開催した。ここには帯広市内からの参加者はいない。旭川と釧路から参加した子どもたちの輝いている姿を目にして、「来年はぜひ帯広でもU-16プロコンを」という関係者の強い思いが今年の開催につながった。

 コンテストを開催するには中学校や高校の先生方の協力が欠かせない。コンテストの趣旨に賛同し、参加を名乗り出てくれたのは、帯広工業高校電気科の増田尚之教諭だ。その増田先生率いる工業技術部は、全校生徒の1割にあたる51名の部員を抱える大所帯の部活動。情報通信技術班(10名)、ロボット製作班(23名)、エアエンジン班(17名)の3班に分かれ、今回U-16プロコンに取り組んだのは、資格取得とプログラミングを活動の中心に据える情報通信技術班である。

 帯広で初めてのU-16プロコン、そのプラットフォーム(CHaser旭川版)のプログラミング指導は、今年、旭川工業高校情報技術科を卒業し、現在富士ソフトでSEを務める髙橋祐希さんが買って出てくれた。髙橋さんは旭川工業高校情報処理部で情報系の全国大会に3回出場した経験をもっている。

 大会のおよそ1カ月前の10月8日、帯広工業高校実習室で、髙橋さんを講師に迎えて初めての講習会を開催した。目的は、U-16プロコンに参加する1年生のプログラミング技能の習熟である。講習には、2年生、3年生の生徒も多く参加していた。その2年生が、参加の動機を「もともとプログラミングには興味があるし、来年の新1年生にも教えたい」と言っていたことが印象的で、生徒たちの前向きで真摯な気持ちには感銘を受けた。

 

競技中には大人でもこんな表情になるのがU-16プロコンの魅力だ。後ろの黒板にも注目!
競技中には大人でもこんな表情になるのがU-16プロコンの魅力だ。後ろの黒板にも注目!

 

 大会には、工業技術部の他班の生徒や、釧路大会実行委員長の斉藤和芳さん、北海道大会実行委員の坂本和士さんが観戦に駆けつけてくれた。まったくの初心者が1カ月でどれくらいのプログラムを作成できるのか、正直言って心配だったが、いざフタを開けてみれば、初心者によくあるエラー停止や自殺プログラムはなく、その高い完成度に驚かされた。「さすが高校生」と選手に話を聞くと、どうやら講師を務めた髙橋さんがメールやSNSで何度も指導してくれたようだ。学校こそ違うが、「先輩から後輩へ技能のリレー」という「旭川モデル」の仕組みがここでも機能していた。

 

総当たりで6試合を実施
総当たりで6試合を実施

 

 参加者が4名と少人数なので、競技は総当たり戦で6試合を行った。その結果、2勝1敗で松尾真冬さんと伊藤航さんの両名が並び、獲得アイテム数の差で松尾さんが初代チャンピオンに輝いた。優勝の松尾さん、準優勝の伊藤さんは3日後に開催される全道大会の切符を手にし、またNPO法人ITジュニア育成交流協会からは図書カードが贈られた。

 

後列左から帯広工業高校の増田先生と帯広工業の2年生、3年生たち、下村。前列左から坂本さん、審判長特別賞の道下悠矢さん、同じく鹿島啓介さん、準優勝の伊藤航さん、優勝の松尾真冬さん、辻田さん
後列左から帯広工業高校の増田先生と帯広工業の2年生、3年生たち、下村。前列左から坂本さん、審判長特別賞の道下悠矢さん、同じく鹿島啓介さん、準優勝の伊藤航さん、優勝の松尾真冬さん、辻田さん

 

 帯広市でIT企業を経営する実行委員長の辻田茂生さんは、「大会が開催できたのは、増田先生と出会うことができたから。これに尽きる、これからも地域を盛り上げて、プログラミングを学ぶ子どもたちの目標になる場所を提供していく」と力強く話した。

 生徒たちを参加させた増田先生は、「プログラミングを学びたい生徒はたくさんいるのだが、これまではなかなか目標を設定できなかった。このようなすばらしい大会を開催してくれる方の気持に応えたい」と、来年以降も本腰を入れて望む構えだ。増田先生は、「今年の大会に参加した1年生には、中学生向けのプレゼンテーション資料作成を指示した」と発表。中学校向けの講習会の実施など、来年の帯広大会へのビジョンをしっかりもっているようである。

 帯広市には、工業系大学や高等専門学校がない、さらに、地域で唯一の工業高校には情報系の学科がない。「IT弱小地域なのでは」と思いきや、そこには情熱をもった先生と生徒たちがいて、「地域のITはオレたちに任せろ」といった気概が伝わってくる。来年、そして再来年と、この高校生が中学生を教え、ともに成長する姿が目に浮かんできた。

 U-16プログラミングコンテストを通じて地域を盛り上げ、子どもたちの成長をともに見守りたい、そんな地元のやさしさに触れて、温かい気持ちになった。

(写真:斉藤和芳)


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