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松山市の小学生、夏休みにプログラミングを体験

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 7月31日、愛媛県松山市のポリテクセンター愛媛で開催された夏休み親子ものづくり体験教室で、新たに「プログラミング体験」のコーナーが設けられ、小学生の親子に好評を博した。

 

 夏休み親子ものづくり体験教室は、毎年行われるポリテクセンター愛媛(愛媛職業能力開発促進センター)の人気イベント。年を追うごとに参加者が増え、今年は金属加工や木材加工、ソーラーカー、タイルアートなど9種類の「親子ものづくり体験コーナー」と、バルーンアート、空気砲、木片組立てなどの「ミニものづくり体験コーナー」に、300人を超える親子が参加した。ここでのものづくりを夏休みの自由研究にあてる子どもたちもいて、会場は大盛況だった。

「プログラミング体験」は1回1時間×3コマを開催
「プログラミング体験」は1回1時間×3コマを開催

 

 事前申込みが不要の「ミニものづくり体験コーナー」に、今年は異色の「プログラミング体験」が加わった。企画に参画した愛媛県職業能力開発協会の若年者人材育成サポーター・西岡秀和氏は、「これまでは文字通り『ものをつくる』だけの教室だったが、2020年度以降、順次実施される新学習指導要領にプログラミングが盛り込まれることを踏まえて、ソフト分野のメニューとして盛り込んだ」と経緯を語った。

 依頼を受けて企画の実現に奔走したのが、愛媛県立松山工業高校の山岸貴弘教諭と松山市内でシステム開発会社を経営する松本純一郎氏だ。松山工業高校が毎年参加し、すぐれた成績を挙げている高校生プログラミングコンテストで使われる対戦型ゲーム「CHaser」をもとに、小・中学生がプログラミングを学ぶことができるカリキュラムを作成し、配付資料を準備した。山岸教諭は、「単に小・中学生にプログラミングのおもしろさをわかってもらうだけでなく、当校のメカトロ部の部員が年齢の近い小・中学生を教えることで、ともに成長していくことができる」と、「体験」の意義を説明した。

 

松山工業高校メカトロ部の1年生が“後輩”たちを教える
松山工業高校メカトロ部の1年生が“後輩”たちを教える

 

 1回1時間×3コマの「体験」には、合計18組の親子が参加。講師役の松本氏が最低限必要なことを説明した後、子どもたちに実際にパソコンを操作してもらい、意図した通りにプログラムが実行されることを確認していった。親子の脇では、メカトロ部の1年生部員が操作を助ける。ディスプレイを見つめる子どもたちの目は、真剣そのものだ。

 

子どもだけでなく親御さんたちも興味津々
子どもだけでなく親御さんたちも興味津々

 

 「1時間で教えられることは限られるが、まずは興味をもってもらい、資料として渡したCDでプログラミングに挑戦してほしい。秋には何らかのかたちでまた集まって、自分たちがつくったプログラムで対戦する場を設けたい」と、山岸教諭。今年の成果だけでなく、来年以降の「プログラミング体験」と、さらにその成果を披露する大会の開催に向けて大きな収穫を得た一日となった。

 

                                                                (文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)


若年者ものづくり、電子回路組立て金賞は北本悠真選手

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 8月7~8日、厚生労働省と中央職業能力開発協会(JAVADA)が主催する第11回若年者ものづくり競技大会が栃木県と沖縄県で開催された。この大会は、企業などに所属せず、職業能力開発施設や工業高校などで技能を習得中の20歳以下の若年者に目標を与え、技能を向上させることによって就業を促進し、同時に若年技能者の裾野の拡大を図ることを目的とする競技会だ。「メカトロニクス」「旋盤」「フライス盤」「木材加工」「自動車整備」「ウェブデザイン」「ロボットソフト組込み」など14の職種で、若者たちが日頃鍛えた技能を競う。ITジュニア育成交流協会は、このうち「電子回路組立て」の金賞/厚生労働大臣賞受賞者を毎年1月に開かれるBCN ITジュニア賞の受賞者としてBCNに推薦している。

 

圧倒的な強さで金賞/厚生労働大臣賞に輝いた愛媛県立松山工業高校の北本悠真選手
圧倒的な強さで金賞/厚生労働大臣賞に輝いた愛媛県立松山工業高校の北本悠真選手
24人の代表によって繰り広げられた静かだが熱い闘い
24人の代表によって繰り広げられた静かだが熱い闘い

 

今年の若年者ものづくり競技大会は、栃木県で7職種、沖縄県で7職種が開催された。「電子回路組立て」の会場は、栃木県宇都宮市体育館。「電気工事」「機械製図(CAD)」「ITネットワークシステム管理」と同じ会場だ。

 

 「電子回路組立て」には、24名が参加。全国の予選を勝ち抜いてきた工業系の高校に所属する選手が10名、都道府県の職業能力開発大学校・短期大学校などの職業能力開発施設の選手が14名という内訳だ。高校は、愛媛県松山工業高校や北海道旭川工業高校、大分県立鶴崎工業高校、兵庫県立小野工業高校などの常連組だけでなく、北信越大会で名門の長野県松本工業高校を下して勝ち上がってきた富山県立高岡工芸高校など、新顔もみえる。

 

組立て基板の製作とそれを制御するプログラミングで勝負が決まる
組立て基板の製作とそれを制御するプログラミングで勝負が決まる

 

 「電子回路組立て」の競技では、競技仕様書にもとづいて「組立て基板」を製作し、仕様書通りに動作するよう、この基板を制御するプログラムを制作する。つまり、電子回路の組立てという物理的な作業の技量と、動作モードのプログラム設計というプログラミングの技量が問われるわけだ。仕様書は、事前に公開されているものと、当日公開されるものがあり、当然、当日公開の課題への対応がポイントの一つになる。また、作業中の態度も評価・採点の対象になる。

 

 競技は、8日の8時50分から、途中10分間の休憩を挟んで、午後1時までの4時間だ。前日に工具やパソコンの搬入・展開などの準備を終えている選手たちは、説明を受けた後、すぐに競技に入る。

 

慎重に、しかしすばやく回路を組み立てる(高岡工芸高校の竹田亮大選手)
慎重に、しかしすばやく回路を組み立てる(高岡工芸高校の竹田亮大選手)

 

 回路の組立てを早く終えることができれば、プログラミングにそれだけ時間を割くことができる。しかし、組立てのハンダ付けなどの厳しい審査基準をクリアするために、選手たちは慎重にコテを操る。

 

プログラムの動作を確認(鶴崎工業高校の宮﨑恭寛選手)
プログラムの動作を確認(鶴崎工業高校の宮﨑恭寛選手)

 

 1時間ほどで、ほとんどの選手が回路組立てを終了し、プログラミングに移る。仕様書を確認しながら、キーボードの上で指を踊らせる。そして競技時間の終了間際。選手たちはつくり終えた基板とパソコンからUSBメモリにコピーしたプログラムを審査員に提出していく。4時間の競技を終えた選手たちに、疲労の色はみえない。むしろ「やり終えた」「力を出し切った」という満足感のような表情が浮かんでいる。

 

 審査は競技終了後、時間をかけて厳正に行われ、成績は翌日、厚生労働省とJAVADAのホームページで発表される。華やかな表彰式などはないが、選手や指導者たちは会場からの帰途、あるいは地元で、やきもきしながらウェブサイトの再読込みを繰り返すのだという。

 

 翌日14時頃、すべての競技の成績が発表された。今年の「電子回路組立て」を制したのは、松山工業高校の北本悠真選手だった。指導する山岸貴弘教諭が「こんな生徒に初めて出会った、というほどの天才肌」と評する通り、回路組立てを真っ先に終えると、最後は動作確認作業や卓上の整理に使うほどの余裕をみせ、圧倒的にも映る勝利を飾った。質・量ともに豊富な練習量と、それを支えてきた指導のたまものの優勝だった。

 

金賞に輝いた北本悠真選手は、松山工業高校メカトロ部の部長を務める
金賞に輝いた北本悠真選手は、松山工業高校メカトロ部の部長を務める

 

 銀賞には東海職業能力開発大学校の加藤誠也選手、鶴崎工業高校の宮﨑恭寛選手、近畿職業能力開発大学校の辰ノ嘉郎選手、銅賞には高岡工芸高校の竹田亮大選手、小野工業高校の藤本将徳選手、愛知県立愛知工業高校の安江柾寛選手が入った。金賞/厚生労働大臣賞に輝いた北本悠真選手は、来年1月20日に開催されるBCN ITジュニア賞2017 の受賞者としてノミネートされる。

 

                      (文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)

 

【寄稿】若年者ものづくり競技大会観戦記

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北海道旭川工業高校 情報技術科教諭

 

下村幸広

 

 電子回路を学ぶ高校生の目標になる大会が二つある、一つは、今年は11月に札幌市で開催される高校生ものづくりコンテストの「電子回路組立」。もう一つは、8月7~8日に宇都宮市で開催された若年者ものづくり競技大会の「電子回路組立て」だ。

 

 若年者ものづくり競技大会は、20歳以下で企業に所属していない若者が学校などで学んでいる技能を競う場として設けられ、今回で11回目を迎える。主催は厚生労働省と国内最大の技能大会である技能五輪を主催する職業能力開発協会で、技能五輪に準じた課題が出題され、この点は授業の延長線上にある高校生ものづくりコンテストとは趣が異なる。

 

24名の精鋭たちが組込み技術を競った
24名の精鋭たちが組込み技術を競った

 

 「電子回路組立て」の出場者は、全国各ブロックの予選を勝ち上がった工業高校生10名と、都道府県の職業能力開発協会が推薦した14名の計24名。過去10回の結果をみると、高校生の優勝が8回と圧倒していて、高校生に分がある。今年の顔ぶれは、常連校の旭川工業高校、小野工業高校、松山工業高校、鶴崎工業高校のほか、初出場の高校勢、そして18歳以上の職業訓練各大学校の精鋭たちだ。やはり今回も、各地区でのし烈な予選を戦ってきた高校勢に分があると考えていいだろう。

 

 この大会では、運営スタッフや学校関係者以外にも、社内に技能五輪チームをもっている自動車メーカーやカメラメーカーが視察に訪れ、指導者と名刺を交換する姿をよく見かける。実際、ここで活躍した選手は企業の技能五輪チームに所属して競技を続けることが多く、たとえば昨年、ブラジル・サンパウロで開催された第43回技能五輪国際大会の電子機器組立てで優勝した今多和歩選手(札幌国際情報高校出身)は、第7回の若年者ものづくり競技大会の準優勝者だ。

 

 リオオリンピックのメダルラッシュに沸く8月8日午前8時50分、4時間の競技が始まった。「電子回路組立て」は、前半は電子回路の製作、後半は作成した電子回路用を制御するプログラムの作成と、まったく異なる技能を組み合わせた、いわゆる組込み技術を競う競技だ。

 

旭川工業高校からは帯川留維選手が出場。敢闘賞を受賞した
旭川工業高校からは帯川留維選手が出場。敢闘賞を受賞した

 

 選手の途中順位は作業の様子から推し量るしかないが、唯一はっきりとわかるのは電子回路製作完了の順番である。競技開始スタートから40分過ぎ、電子回路製作を最初に終えたのは、松山工業高校の北本悠真選手だった。ほどなく旭川工業高校の帯川留維選手、高岡工芸高校の竹田亮太選手と続いた。今年もやはり高校生が強いようだ。

 

 北本選手はプログラム課題も順調にこなし、翌日の結果発表で見事金賞(優勝)/厚生労働大臣賞に輝いた。競技前日、北本選手を指導している山岸貴弘教諭に話をうかがう機会があって、「選手のできには自信がある」と言っておられたが、それが現実のものになった。日頃の努力が実った瞬間である。

 

 会場の別室では、同じIT系競技の「ITネットワークシステム管理」も行われた。こちらは出場選手17名中、高校生は2名と、高校生が活躍する「電子回路組立て」とはまったく違う様相だった。出場枠が1県1名になり、高校生には敷居の高い大会になってしまったのが残念である。ネットワークやサーバーに興味をもつ高校生の目標となるべく、「電子回路組立て」同様、高校生出場枠を設けてほしいものである。

 

 選手たちは全身全霊をかけてこの大会に臨んでいる。指導・支援する先生方の労力は並大抵ではない。この大会を通して、日本のものづくりはそれを支える先生方の奉仕によって成り立っていることをあらためて痛感した。多くの若者がものづくりに興味をもち、切磋琢磨しながら、ライバルよりよいものをつくりあげる――大会の目的は概ね達成できている。そんな感想を抱いた。

 

 

                                                                       (写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)

【事務局通信】 さくらインターネット・江草陽太執行役員にインタビュー

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 BCNが発行するIT業界流通専門紙『週刊BCN』のインタビューコーナー「千人回峰」で、理事長の奥田喜久男が協会の協賛企業であるさくらインターネットの江草陽太執行役員にお話をうかがいました。

 

 江草さんは、入社2年目の今年7月に執行役員に就任。25歳にして、さくらインターネットの技術部門をリードしています。名刺に「執行役員」と並んで「エンジニア」と記されているように、期待されるのは「技術のゼネラリスト」。小学生のときのコンピュータとの出会い、中学生で同好会を立ち上げ、高校生のときにはロボットコンテストに挑戦……など、現在の江草さんに脈々とつながる「ITジュニアの成長物語」が語られています。多くの挑戦の中で培われた「技術のゼネラリスト」の素顔にぜひ触れてください。

 

 掲載は少し先の話になりますが、『週刊BCN』11月28日号(Vol.1655)/12月5日号(Vol.1656)の上下2回にわたります。また、ウェブサイト「週刊BCN+」にも掲載し、同時にここ「ITジュニアの広場」からもご覧いただけるようにする予定です。どうか楽しみにお待ちください。

 

                                                                           NPO法人 ITジュニア育成交流協会 事務局

 

さくらインターネット 江草陽太執行役員
さくらインターネット 江草陽太執行役員

6回目を迎えるU-16プロコン 「旭川モデル」として全国展開も

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 旭川で6回目を迎えるU-16プログラミングコンテストの準備が着々と進みつつある。7月の事前講習会から始まり、現在、競技部門に参加する子どもたちは11月6日に旭川市科学館で行われる大会に向けて、自分のプログラムに日々磨きをかける段階に入っている。

 

 U-16プログラミングコンテスト旭川大会は、旭川市や近郊の中学校・高等学校に在籍する16歳以下(高校1年生以下)の子どもたちを対象にしたコンテスト。2011年に始まり、毎年参加者を増やしながら今年で6回目を迎える。

 

 コンテストには、競技部門と作品部門がある。競技部門は対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」の上で参加者が作成したプログラム同士が戦って勝敗を決めていく。自分の書いたプログラムが観客の前で戦うのだから、ある種、スポーツのような興奮を伴う部門だ。作品部門は、CGやウェブコンテンツ、アプリ、音楽など、プログラムを用いて制作した作品であれば自由に参加できる。

 

 実行委員会が掲げる大会の目的は四つ。「パソコンが好きな子どもたちの夢や目標となる場所を提供する」「情報技術を生業としている大人が子どもたちの作品を評価し、ほめ称える場所を提供する」「情報技術を通じた子どもたちの健全育成」「将来のITエンジニア育成」。このどれもが、子どもたちの成長を願う気持ちに溢れているが、さらに旭川の大会がすばらしいのは、ゼロからプログラミングを学ぶ子どもたちのために、「先輩が後輩を教える」という仕組みをもっている点だ。

 

 秋の大会に向けて、実行委員会は夏休みに競技部門の参加者を対象に事前講習会を開催し、プログラミングの基本と、大会で使用する「CHaser旭川版」のプログラミングを教える。講習会終了後、子どもたちは中学校のクラブ活動などで自分のプログラムを磨いていくことになるのだが、どうしてもわからないこと、行き詰まってしまうことがある。このとき、中学校が実行委員会に連絡すると、旭川工業高校や旭川工業高等専門学校でプログラミングを学んでいる生徒・学生が中学校に駆けつけてきて、教えてくれるのだ。

 

 教えることは学ぶこと。高校生、高専生たちは、中学生たちを教えながら自分たちも学んでいく。旭川では、先輩が後輩を導きながら、ともに成長する仕組みができあがっているのだ。7月16・17日に開催された今年の事前講習会でも、旭川工業と旭川高専の生徒・学生、計10名の合同チームが資料を作成し、指導にあたった。

実行委員会による中学校への告知活動が実って事前講習会には32名が参加
実行委員会による中学校への告知活動が実って事前講習会には32名が参加
教材づくりを含めて高校生・高専生が中学生を指導する
教材づくりを含めて高校生・高専生が中学生を指導する

 今年の事前講習会には、中学6校、高校1校から計32名が参加。すでにノウハウをもっている中学校は事前講習会には参加していないことから、11月6日の本大会参加者は過去最多だった昨年の32名を大きく上回り、50名前後になるとみられる。

 

 ITジュニア育成交流協会は、旭川大会をはじめとする北海道内のU-16プログラミングコンテストを応援するとともに、「先輩が後輩を教える」仕組みをもつU-16プロコンのかたちを「旭川モデル」と名づけ、全国各地域への展開を支援していく。多くの子どもがプログラミングの楽しさに触れ、日本の未来を担うITジュニアとして育っていくために、地域の志ある大人たちとともに「旭川モデル」の定着を目指す。

 

(文:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)

(写真:U-16プログラミングコンテスト実行委員会)

U-16プロコン 北海道・富良野で芽吹く

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 U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)が、北海道でムーブメントを広げつつある。2011年に旭川で始まった大会は、14年に釧路大会、15年に帯広での北海道大会開催と、地域の有志たちと高校生・高専生の手によって開催地を増やしてきた。そしていま、富良野市で芽吹こうとしている。

 

 今年の旭川大会は11月6日の開催で、その前日の5日には、旭川から50kmあまり離れた富良野市で、ITイベント「LOCAL DEVELOPER DAY'16 in FURANO」が行われる。主催は富良野市のIT系コミュニティ「FuraIT(ふらいと)」。これまでSQLやLINUXの勉強会、ドローンに関するミーティングなど、ITに関する幅広い分野でイベントを開催してきた実績がある。集まるのは、地域のIT業界人や高校生などさまざまだ。

 

 「LOCAL DEVELOPER DAY'16 in FURANO」では、さくらインターネットのエバンジェリスト、法林浩之氏によるゲスト講演やU-16プロコンの説明会などを予定している。今回は富良野だけでなく、道内外から広くIT人材が参加するイベントを旭川大会の前日に開催することで、U-16プロコンの理解者を増やそうという計画だ。

 

7月30日には高校生を対象に指導者向けの講習会を開催
7月30日には高校生を対象に指導者向けの講習会を開催

 

 実はこのイベントに先立って、旭川のU-16プロコン実行委員会は、7月30日に富良野で指導者向けの講習会を行った。これは富良野緑峰高校の生徒たちに、今後U-16プロコンの講師として活動してもらうための布石だ。U-16プロコンとして、富良野市で大会が立ち上がるのはまだ先かもしれないが、こうした活動が地域に根づいていくことが、教える側と教わる側、双方の子どもたちの未来をつくっていく。

 

 

                                    (文:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)

                             (写真:U-16プログラミングコンテスト実行委員会)

【協賛企業通信】アメリカンフットボール、エレコム神戸の試合を見てきた!

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 ITジュニア育成交流協会の協賛企業であるエレコムは、地域に密着した社会貢献活動の一つとして、アメリカンフットボールXリーグWEST所属の神戸ファイニーズをオフィシャルスポンサーとしてサポートしている。そのエレコム神戸ファイニーズ(エレコム神戸)の2016レギュラーシーズン第4戦、10月1日の対オール三菱ライオンズ(オール三菱)戦を観戦する機会を得た。ハーフタイムにお聞きしたエレコム・葉田順治社長のお話とともに観戦記をお届けしよう。

 

産学協同でチームの強化に取り組む

 エレコム神戸ファイニーズは、1975年。滋賀県長浜市でクラブチームの湖北ファイニーズとして誕生した。91年、93年にはサンスター・ファイニーズとして全日本社会人選手権で2位になったこともある名門チームだ。2001年からはNPO法人として活動し、05年に拠点を神戸に移した。エレコムは09年4月にメインスポンサーとなり、チーム名もエレコム神戸ファイニーズとなって、14年シーズンはXリーグWESTを制覇した。

「もともと当社の社員が神戸ファイニーズでプレーしていたことがきっかけです。2008年の当社の忘年会のとき、チームスポンサーを探している話を耳にして、そのご縁から話が進んで、翌年にメインスポンサーになりました」(葉田社長)

 今春は西日本社会人選手権で準優勝のエレコム神戸。第4節は社会人1部の中位にいるオール三菱ライオンズが相手だ。天候に恵まれた大阪・万博記念公園内のエキスポフラッシュフィールドでの試合は、17時10分にキックオフを迎えた。

 

 

 前半戦、自力に勝るエレコム神戸が順調に先制点を挙げ7-0とする。これまでの戦績からみて、このまま得点差を広げていくかと思われたエレコム神戸だが、オール三菱の踏ん張りに追加点が奪えない。そして第2クォーター、前半終了が近づいてきた時間帯に、ここまで辛抱強く耐えてきたオール三菱に絶好のチャンスが訪れ、これをものにしたオール三菱が同点に追いついた。その後、再度突き放しにかかったエレコム神戸の攻撃をオール三菱がしのぎ、7-7の同点で前半が終了した。

「一昨年のシーズン終了後、当時の主力プレーヤー数名がリーグ優勝を集大成として引退したので、いまチームは再構築の途上です。昨年は芳しくない結果でしたが、今年は能力の高い選手が加入し、強化は順調です。クラブチームは企業チームに比べると練習時間などに制限がありますが、効率よくチーム力を高めています。目指しているのは『一過性の強いチーム』ではなく、『継続性の高いチーム』です」(葉田社長)

 エレコムは、15年に教育環境の向上とファイニーズ/神戸大学のアメリカンフットボール部レイバンズ(関西学生リーグ1部)の強化を図るために、神戸大学に鶴甲第一キャンパスの人工芝化とトレーニングジム設備を寄付。この神戸大学エレコムグラウンドで、ファイニーズ/レイバンズが合同トレーニングや合同練習を行って、産学共同で日本一を目指している。さらにフィールド外でも、小学生向けにフラッグフットボール教室を開催したり、ファンの方々との交流を目的とした感謝イベントを開催したりなど、多くの地域活動を実施している。

 

試合を支配しながらの惜敗で今後の連勝に期待

 後半戦も勢いはエレコム神戸にあった。前半同様、圧倒的な攻撃でオール三菱にプレッシャーを加え続け、攻めるエレコム神戸、守るオール三菱の状況が続いた。終盤に差しかかったところで、膠着状態だった試合が一気に動き出す。あとわずかの所でゴールラインを越えることができないエレコム神戸は、ここまで攻めあぐねていたオール三菱にわずかな隙を突かれ、7-14と逆転されてしまう。さらに、勢いに乗った相手にフィールドゴールで追加点を奪われ、7-17とさらにリードを広げられてしまう。

サイドラインから戦況を見守るエレコム葉田社長
サイドラインから戦況を見守るエレコム葉田社長

 このままでは終わることができないエレコム神戸。テンポよく攻撃を重ね、タッチダウンで14-17と追い上げる。しかし、残り時間1分19秒から再逆転を狙った猛追も及ばず、残念ながらエンドオブゲーム(試合終了)を迎えた。試合を支配しながらも勝負に負けたエレコム神戸。不完全燃焼で非常に悔しい一戦だったが、まだ社会人王者決定トーナメント進出のチャンスは残っている。今後の連勝と、勝利を手にしたオフシーズンの地域貢献活動に期待したい。

(文・写真 BCN 石井健太郎)

U-22プロコン2016 小学生・中学生を含む4作品に栄冠

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 252作品のなかから選ばれた16作品――。10月2日、U-22プログラミング・コンテスト実行委員会が主催し、経済産業省などが後援する「U-22プログラミング・コンテスト2016」の最終審査会が東京の秋葉原UDXで開催された。BCN ITジュニア賞のノミネート対象である経済産業大臣賞で、小学生と中学生という若い才能が開花した。

 

史上最多の応募作品の中から 選ばれたファイナリスト

 U-22プログラミング・コンテストは、アイデアに富んだイノベーティブな人材発掘と育成を目的とするコンテストで、1980年から経済産業省が主催してきた。2014年からは応募対象者を22歳以下に拡大し、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の会員企業のなかでコンテストの趣旨に賛同する企業で構成する実行委員会が主催している。

 

 

 今年は史上最多となる770人、252作品の応募があり、盛り上がりをみせていた。事前審査で41作品に、一次審査で16作品にまで絞り込み、最終審査会では、審査員の前で児童・生徒・学生がプレゼンテーションを披露。審査員からの質問にはきはきと答えた。

 最終審査会の冒頭、実行委員長を務めるサイボウズの青野慶久社長は、「2015年の最終審査は小学生、中学生がすごいレベルのプレゼンをして非常に盛り上がった。今回はもっとたくさんの人に見てもらおうと、ニコニコ動画生放送で中継する。252作品のなかの16作品、つまりたった6%の選ばれた作品を生み出した皆さんだから、自信をもって元気よく発表してほしい」と激励した。

 

参加者を激励する青野慶久実行委員長
参加者を激励する青野慶久実行委員長

生活のなかから着想を得て 問題解決に取り組む

 16作品のプレゼンテーションが終わり、実行委員・審査委員による厳正な審査の結果、4組の経済産業大臣賞が決定した。

 経済産業大臣賞アイデアに選ばれたのは、東京学芸大学附属竹早小学校4年生の二ノ方理仁さんのアプリ『Worknote - Organize your Brain』。二ノ方さんは、「したいこと、中断してしまっていることがたくさんあって、何をどこまでしたか考えると頭がごちゃごちゃになる」とアプリ開発のきっかけを説明。そんな日々のなかでひらめいたのが、作業の整理整頓ツールだったという。作業記録をつけ、整理し、記録した中断作業の続きを実行することで、作業を効率よくこなすことができる。

 

二ノ方理仁さんのアプリ『Worknote - Organize your Brain』
二ノ方理仁さんのアプリ『Worknote - Organize your Brain』

 

 経済産業大臣賞プロダクトは、ぐんま国際アカデミー中等部7年生(中学1年)の青山柊太朗さんのアプリ『わたしのお薬』。夏休みに米シリコンバレーのプログラミング講座「Make School」に3週間通い、英語で行われる授業を受けて、プログラミングの基礎を学んだという。

 

青山柊太朗さんのアプリ『わたしのお薬』
青山柊太朗さんのアプリ『わたしのお薬』

 

 『わたしのお薬』は毎日4種類もの薬を飲む祖父のために開発した薬の飲み忘れを防止するアプリだ。高齢者が薬を飲まない理由を洗い出し、機能やインターフェースを工夫した。9月中旬のコンテスト一次審査後、さらにブラッシュアップを重ねて、デザインを親しみやすいものに変更したという。

 

専門学校生の高い技術力 独自OSと3Dアクションゲーム

 経済産業大臣賞テクノロジーに選ばれたのは、HAL東京の斎藤鴻さんの自作OS『WARos(ウォー・オーエス)』。ゲームやスマートフォン向けアプリの応募が多いなかで、独自のOSで応募した。『WARos』はIoTに最適なOSで、組込み環境に応じて、必要な機能だけを搭載。不要な機能を落とすことで、ネットワーク経由で攻撃されるリスクを減らし、また高速起動ができるなどの利点もある。

 

斎藤鴻さんの自作OS『WARos』
斎藤鴻さんの自作OS『WARos』

 

 経済産業大臣賞総合に選ばれたのは、ECCコンピュータ専門学校のチーム・藤原重工のゲーム作品『Project Stinger』。3DアクションRPGで、モーションの動きを滑らかにする技術を搭載し、カクカクした動きがない。また、ウェポンチェンジやコアメモリのシステムなども完成度が高く、ニコニコ生放送の視聴者から最も高い支持を受けて、Best Viewers賞も受賞した。

 

チーム・藤原重工の3DアクションRPG『Project Stinger』
チーム・藤原重工の3DアクションRPG『Project Stinger』

 

 経済産業大臣賞に輝いた4チーム/個人は、来年1月20日に開催されるBCN ITジュニア賞2017の受賞者としてノミネートされる。

 

(文・写真 BCN 山下彰子)


U-16プロコン釧路大会 チャンピオンは高専1年生の畑井有人さん

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 自分のキャラクターの動きに一喜一憂。思わぬ結末に会場がどよめく――。10月10日、北海道釧路市の釧路市民活動センターで、第4回U-16プログラミングコンテスト釧路大会が開催された。釧路大会は、規模こそ“本家”旭川大会の参加者50名前後(予定)に対して6名という小さな大会だが、昨年と一昨年、2年連続で全道大会の覇者を輩出。その北海道チャンピオンたちも出場する「山椒は小粒でもぴりりと辛い」大会だ。

参加者を前に開会を宣言する斉藤和芳実行委員長
参加者を前に開会を宣言する斉藤和芳実行委員長

 競技部門は対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」の上で参加者が作成したプログラム同士が戦って勝敗を決めていく。定められた動きの回数のなかで「相手より多くのアイテムを回収する」「出会った相手キャラクターの上にブロックを落とす」「相手が壁に突っ込むか場外に出て自滅する」のいずれかの方法で勝利を手にできる。

キャラクターは青のC(Cool)が先手、赤のH(Hot)が後手
キャラクターは青のC(Cool)が先手、赤のH(Hot)が後手

 今年の釧路大会は、昨年の全道大会を制した加藤楓志さん、同じく一昨年の覇者である篠田裕人さんが揃って釧路工業高等専門学校に進学して出場。冒頭に、斉藤和芳実行委員長が「北海道チャンピオンのレベルの高い戦いを期待したい」と述べ、戦いの幕が切って落とされた。マイクを片手に実況するのは、実行委員として大会を支える釧路高専のOB、五十嵐優太さん。対戦後の解説は釧路高専の4年生、5年生が務めた。

堂に入った司会ぶりをみせた五十嵐さん
堂に入った司会ぶりをみせた五十嵐さん
高専生はわかりやすく的確な解説で大人たちをうならせた
高専生はわかりやすく的確な解説で大人たちをうならせた

 1回戦は、3人ずつのブロックに分かれての総当たり戦。順調にアイテムを回収していくキャラクターもいれば、相手に近づいていく戦闘的なキャラクター、同じ動きを繰り返してしまうキャラクターもいて、プログラムを書いた本人はもちろん、観客も笑ったり、ため息をついたり、歓声を上げたりと忙しい。自分が書いたプログラムが動作している間、参加者も観客の一人になる。あと一手で勝利というときに壁に突っ込んで自滅したプログラムを書いた本人は、のけぞったあと、机に突っ伏して悔しさを表していた。こうした喜怒哀楽を素直に表現して、参加者と観客が一体になるのがU-16プロコンの楽しさだ。

喜怒哀楽を素直に表現できるのがU-16プロコンの楽しさだ
喜怒哀楽を素直に表現できるのがU-16プロコンの楽しさだ

 その1回戦は、昨年の北海道チャンピオンが敗退する波乱の幕開け。準決勝に進んだのは、釧路高専1年の畑井有人さん、一昨年のチャンピオン篠田裕人さん、中学1年生の吉本雄斗さん、おなじく中学1年生で紅一点の岸凪沙さん。北海道チャンピオンはここでも苦杯をなめ、決勝には畑井さんと岸さんが進出した。

優勝インタビューに答える畑井有人さん
優勝インタビューに答える畑井有人さん

 決勝では、「事前講習の3日間でプログラムを書き上げた」という畑井さんが先輩の貫禄をみせて危なげなく勝利を収めた。畑井さんと岸さんは、11月6日、旭川大会と同時に開催される全道大会に出場する。今年の釧路大会は、参加者やスタッフの盛り上がりはもちろん、見学に訪れた親子連れや先生もいて、来年以降につながる大成功のうちに幕を下ろした。

参加者と実行委員会でパチリ。前列左から、4位の吉本雄斗さん、2位の岸凪沙さん、優勝した畑井有人さん、3位の篠田裕人さん
参加者と実行委員会でパチリ。前列左から、4位の吉本雄斗さん、2位の岸凪沙さん、優勝した畑井有人さん、3位の篠田裕人さん

                         (文:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

                   (写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎・市川正夫)

第27回高専プロコン 高専生の独創的なアイデアが伊勢で輝く

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 高専の学生が待ちに待った季節がやってきた。全国高等専門学校 第27回プログラミングコンテスト(高専プロコン)の本選は、10月8・9日の2日間にわたって三重県伊勢市で開催された。予選を通過した課題・自由・競技部門の計101チームの高専生たちが、全国から会場の伊勢市観光文化会館に集結。今大会のテーマ「輝く真珠は僕らの発想(アイデア)」の下で、この日のために磨いてきた技術とアイデアを披露した。

会場の伊勢観光文化会館
会場の伊勢観光文化会館

積み上げてきた成果を披露

 開会式では、今年の主管校でプロコン委員長を務める鳥羽商船高専の新田保次校長が、「これからの第4次産業革命、IoT社会を引っ張っていくのは皆さんだ。2日間、遺憾なく実力を発揮し、思い出に残るプロコンにしてほしい」と、参加する高専生たちを激励した。

 

主管校・鳥羽商船高専の新田保次校長
主管校・鳥羽商船高専の新田保次校長

 高専プロコン初日は、課題・自由部門のプレゼンテーション審査と競技部門の1回戦が行われた。課題部門では、与えられたテーマに沿った作品を制作・発表・展示する。今大会のテーマは、2020年開催の東京五輪を意識した「スポーツで切り拓く明るい社会」。ひと言でスポーツといっても、種目の違いや、見て楽しむ/プレーして楽しむという切り口の違いから、高専生たちが考えてきた作品は実に多彩で楽しいものになった。自由部門では、各チームがジャンルにとらわれない独創的な作品を紹介。両部門のプレゼンテーションでは、発表者の緊張が伝わってくるシーンや、審査員から寄せられる鋭い質問にたじろぐシーンがみられたが、説明方法や資料に工夫を凝らしながら、自分たちの作品に自信をもって力強くアピールしていた。

 

 高専プロコンの華、競技部門の今年の競技は、「ホントの魅力がミエますか?」をテーマにしたパズルだ。多角形の木片でできたパズルのピースを制限時間内に実際に手で枠内に並べ、完成させる「早さ」と「正確さ」を競う。完成させると、ピースと枠の形状から、伊勢志摩・鳥羽の名所名物の絵が浮かび上がる仕組みだ。各チームがどのようにして枠やピースを電子データ化し、開発したアルゴリズムを駆使していかに早く正確な回答を導き出すかが勝負の分かれ目になる。

 

 一回戦では、各チームがPCだけでなく、カメラやスキャナなどを持ち込んで、それぞれの手法でパズルを解きにかかった。多くのチームが回答を導き出すのに四苦八苦するなか、二人の司会者による実況が場を盛り立て、観客はステージから目をそらすことができない。多くのチームがパズルを完成させることができず、ピースを枠内に並べて試合を終えるなか、第2試合で初めて絵を完成させた呉高専の「快速カケライナー枠行き」チームには、観客席から大きな拍手と歓声が上がった。しかし、結局、完全回答したのは呉高専一校にとどまり、初日の競技を終えた。急きょ発生したルール変更への対応もあり、この晩、各チームは寝ずにプログラムを改良し、二日目に備えた。

 

まさかの展開の二日目、人力?

 そして迎えた二日目。競技部門は、一回戦第4試合の再試合と敗者復活戦、準決勝、決勝が行われた。ここで競技の様相が明らかに変わり、まさかの展開になっていく。

 

 敗者復活戦では5校がパズルを完成させ、会場は大いに沸いた。しかし、問題の難易度が上がった準決勝あたりから、競技の様相が変わり始める。それまでは時間をぎりぎりまで使ってパズルの完成を目指すチームが多かったが、戦法を切り替えて、スピード重視で人力でピースを置けるだけ置いて回答を終える「早さ」重視のチームが現れはじめたのだ。実際に、最後まで完成を目指したチームがピース数の差で敗れてしまうことがあり、並べた「ピース数」と「早さ」だけで勝つことができるとわかれば、各チームの切り替えは早かった。決勝では、プログラムを走らせるか、人力だけでパズルを解くか、試合に勝つか勝負に勝つか、各チームは決断を迫られた。その結果、途中までプログラムでピースをまとめ、ある時点で人力に切り替えるチームが多くなったように思う。

 

 こうした戦いの結果、競技部門を制したのは、同時開催のNAPROCK国際大会に出場したモンゴル科学技術大学だった。高専プロコンとしての優勝・文部科学大臣賞を受賞したのは、2位で試合を終えた弓削商船高専「一致百慮」チームだった。結果として、組んできたプログラムを走らせる場面が少なくなったが、ある上位入賞チームが壇上で「情けない気持ちだ」と語ったことが印象的だった。また、「プログラミングがうまくできていたとしても、時間内に終えることは難しかった」と話すチームが多く、パズルが非常に難題であったことがうかがえた。

高専プロコン競技部門を制した弓削商船高専「一致百慮」チーム
高専プロコン競技部門を制した弓削商船高専「一致百慮」チーム

 課題・自由部門は、デモンストレーション審査、展示審査で作品を評価。その結果、課題部門は選手目線の映像や音声を取得して動きを伝える東京高専の「リアルタイムに選手とシンクロするスポーツ観戦システム」が、自由部門は主管校である鳥羽商船高専の「みつばちず――ドローンを用いた防災減災地図作成システム」が、それぞれ最優秀賞・文部科学大臣賞に輝いた。

課題部門の東京高専は360°ディスプレイで臨場感を追求
課題部門の東京高専は360°ディスプレイで臨場感を追求
自由部門の鳥羽商船高専のシステムは社会実験で実用に供されている
自由部門の鳥羽商船高専のシステムは社会実験で実用に供されている

 神沼靖子審査委員長の講評を聞いて閉会式を終えた高専生たち。二日間で力を出し切り、徹夜組も多いだろうに、宇治山田駅に向かうみんなの顔は満足げに輝いていた。来年の高専プロコンは、山口県徳山市、主管校は大島商船高専での開催を予定している。

 

(文:『週刊BCN』記者 前田幸慧)

(写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎・市川正夫)

【寄稿】U-16プロコン、帯広でも始まる!

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北海道旭川工業高校 情報技術科教諭

 

下村幸広

 

 

昨年の全道大会開催がきっかけに

 2011年9月、旭川で始まったU-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)。2013年に釧路に飛び火し、さらに今年は北海道帯広市が3番目の開催地となった。「第1回U-16プログラミングコンテスト帯広大会」である。実は昨年、帯広市に旭川大会と釧路大会の上位入賞者が集まり、北海道大会を開催した。ここには帯広市内からの参加者はいない。旭川と釧路から参加した子どもたちの輝いている姿を目にして、「来年はぜひ帯広でもU-16プロコンを」という関係者の強い思いが今年の開催につながった。

 コンテストを開催するには中学校や高校の先生方の協力が欠かせない。コンテストの趣旨に賛同し、参加を名乗り出てくれたのは、帯広工業高校電気科の増田尚之教諭だ。その増田先生率いる工業技術部は、全校生徒の1割にあたる51名の部員を抱える大所帯の部活動。情報通信技術班(10名)、ロボット製作班(23名)、エアエンジン班(17名)の3班に分かれ、今回U-16プロコンに取り組んだのは、資格取得とプログラミングを活動の中心に据える情報通信技術班である。

 帯広で初めてのU-16プロコン、そのプラットフォーム(CHaser旭川版)のプログラミング指導は、今年、旭川工業高校情報技術科を卒業し、現在富士ソフトでSEを務める髙橋祐希さんが買って出てくれた。髙橋さんは旭川工業高校情報処理部で情報系の全国大会に3回出場した経験をもっている。

 大会のおよそ1カ月前の10月8日、帯広工業高校実習室で、髙橋さんを講師に迎えて初めての講習会を開催した。目的は、U-16プロコンに参加する1年生のプログラミング技能の習熟である。講習には、2年生、3年生の生徒も多く参加していた。その2年生が、参加の動機を「もともとプログラミングには興味があるし、来年の新1年生にも教えたい」と言っていたことが印象的で、生徒たちの前向きで真摯な気持ちには感銘を受けた。

 

競技中には大人でもこんな表情になるのがU-16プロコンの魅力だ。後ろの黒板にも注目!
競技中には大人でもこんな表情になるのがU-16プロコンの魅力だ。後ろの黒板にも注目!

 

 大会には、工業技術部の他班の生徒や、釧路大会実行委員長の斉藤和芳さん、北海道大会実行委員の坂本和士さんが観戦に駆けつけてくれた。まったくの初心者が1カ月でどれくらいのプログラムを作成できるのか、正直言って心配だったが、いざフタを開けてみれば、初心者によくあるエラー停止や自殺プログラムはなく、その高い完成度に驚かされた。「さすが高校生」と選手に話を聞くと、どうやら講師を務めた髙橋さんがメールやSNSで何度も指導してくれたようだ。学校こそ違うが、「先輩から後輩へ技能のリレー」という「旭川モデル」の仕組みがここでも機能していた。

 

総当たりで6試合を実施
総当たりで6試合を実施

 

 参加者が4名と少人数なので、競技は総当たり戦で6試合を行った。その結果、2勝1敗で松尾真冬さんと伊藤航さんの両名が並び、獲得アイテム数の差で松尾さんが初代チャンピオンに輝いた。優勝の松尾さん、準優勝の伊藤さんは3日後に開催される全道大会の切符を手にし、またNPO法人ITジュニア育成交流協会からは図書カードが贈られた。

 

後列左から帯広工業高校の増田先生と帯広工業の2年生、3年生たち、下村。前列左から坂本さん、審判長特別賞の道下悠矢さん、同じく鹿島啓介さん、準優勝の伊藤航さん、優勝の松尾真冬さん、辻田さん
後列左から帯広工業高校の増田先生と帯広工業の2年生、3年生たち、下村。前列左から坂本さん、審判長特別賞の道下悠矢さん、同じく鹿島啓介さん、準優勝の伊藤航さん、優勝の松尾真冬さん、辻田さん

 

 帯広市でIT企業を経営する実行委員長の辻田茂生さんは、「大会が開催できたのは、増田先生と出会うことができたから。これに尽きる、これからも地域を盛り上げて、プログラミングを学ぶ子どもたちの目標になる場所を提供していく」と力強く話した。

 生徒たちを参加させた増田先生は、「プログラミングを学びたい生徒はたくさんいるのだが、これまではなかなか目標を設定できなかった。このようなすばらしい大会を開催してくれる方の気持に応えたい」と、来年以降も本腰を入れて望む構えだ。増田先生は、「今年の大会に参加した1年生には、中学生向けのプレゼンテーション資料作成を指示した」と発表。中学校向けの講習会の実施など、来年の帯広大会へのビジョンをしっかりもっているようである。

 帯広市には、工業系大学や高等専門学校がない、さらに、地域で唯一の工業高校には情報系の学科がない。「IT弱小地域なのでは」と思いきや、そこには情熱をもった先生と生徒たちがいて、「地域のITはオレたちに任せろ」といった気概が伝わってくる。来年、そして再来年と、この高校生が中学生を教え、ともに成長する姿が目に浮かんできた。

 U-16プログラミングコンテストを通じて地域を盛り上げ、子どもたちの成長をともに見守りたい、そんな地元のやさしさに触れて、温かい気持ちになった。

(写真:斉藤和芳)

第6回U-16旭川プロコン、雪を融かした子どもたちの熱気

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「例年に比べると3週間は早いですね」。タクシーの運転手さんは開口一番、天候をそんなふうに表現した。旭川は白一色。雪は降り続いていたが、しかし旭川科学館のなかは、1年前に感じた独特の興奮に包まれていた。第6回U-16旭川プログラミングコンテスト/第3回U-16プログラミングコンテスト北海道大会(主催:U-16旭川プログラミングコンテスト実行委員会/後援:旭川市教育委員会)は、そんな熱気のなかで始まった。

競技部門は過去最高の54人が参加

 大会当日の朝、30cm近くまで降り積もる雪のなか、大会に参加する子どもたちが先生に連れられて、次々に会場の旭川市科学館サイバルに入っていく。第6回U-16旭川プログラミングコンテスト/第3回U-16プログラミングコンテスト北海道大会は、11月6日午前10時、旭川高等専門学校の佐竹利文教授による開会宣言で幕を開けた。

 U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)には、競技部門と作品部門がある。競技部門は対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」の上で参加者が作成したプログラム同士が戦って勝敗を決めていく。今年の競技部門の参加者は、昨年の倍近い54人。中学校7校、高校3校からの参加だ。昨年と同じ会場の特別展示室は、スクリーンと機材、観客席を置いたら満杯状態になっていた。

 作品部門は、CGやウェブコンテンツ、アプリ、音楽など、プログラムを用いて制作した作品であれば自由に参加できる。会場後ろのボードで展示した作品部門には、9作品が集まった。

 競技部門の旭川大会予選は、一人ひとりが実行委員会が用意したプログラムと戦って得点を競い、上位12人が決勝に進出する。決勝トーナメントは北海道大会を兼ねて、この12人に釧路大会の優勝者・準優勝者、帯広大会の優勝者・準優勝者の4人が加わり、16人が2本先取の3本勝負で優勝を争う。

 自分が書いたプログラムが観客の前で戦うのは、期待と不安、そして何となく感じる恥ずかしさが三分の一ずつ、といったところだろうか。分身同士の戦いでは、自分のプログラムだけでなく、仲間が書いたプログラムであっても応援には力がこもる。とくに過去最高の参加者を記録した今年は、歓声と笑いが絶えない楽しい大会となった。

 予選では、残念ながらプログラムが立ち上がらなかったり、すぐに止まってしまったり、あるいは自ら壁に突っ込んでしまう、同じところをぐるぐる回ってしまうシーンも見られたが、そこは初めてプログラミングに取り組んだ子どもが誰でも通る道。勝っても負けても失敗しても、歓声が会場を包んでいた。

会場は常に歓声と笑いに包まれていた
会場は常に歓声と笑いに包まれていた

決勝は女子生徒の戦いに

 旭川大会予選を勝ち抜いた12人の内訳は、今年初めて挑戦した中学1年生が5人、2年生が1人、3年生が5人、高校・高専1年生が1人。昨年、旭川大会を制して北海道大会に進み、決勝で涙をのんだ下村恵子さん(旭川教育大付属中3年)や、富良野から参加した中村拓夢さん(富良野緑峰高1年)など、多彩な顔ぶれだ。

 決勝トーナメントからの北海道大会に参加するのは4人。釧路大会では、昨年、一昨年の北海道大会の覇者の二人が敗退するという“波乱”があり、それだけに今年優勝した畑井有人さん(釧路高専1年)、準優勝の岸凪沙さん(阿寒中1年)に期待が集まった。つい3日前に初めて開催した帯広大会からの代表は、優勝した松尾真冬さん(帯広工業高1年)と準優勝の伊藤航さん(帯広工業高1年)だ。

 2本先取の決勝トーナメントはさすがにレベルの高い戦いになった。戦いの場である「CHaser」のマップパターンが変わったことや、相手のプログラムとの相性という運の要素もあって、旭川大会の予選上位者や釧路・帯広の代表はなかなか勝つことができない。ベスト4に残ったのは、岩上舞依さん(中央中1年)、鬼塚佳任さん(神居中2年)、後藤耀一さん(神居中3年)、それに予選1位通過の下村さんという“旭川組”で、決勝は岩上さんと下村さんという女子生徒の戦いになった。

決勝に進出した岩上舞依さん(左)と下村恵子さん
決勝に進出した岩上舞依さん(左)と下村恵子さん

 決勝はお互いのキャラクターがにらみ合う場面もある見応えのある戦いで、1本ずつ取り合った後、下村さんが最後のゲームで岩上さんを制した。下村さんのプログラムは、傍から見ていても他の参加者のそれとは動きが異なるプログラム。スタートから周囲を見渡し、自分のキャラクターがマップ上のどこにいるかを確認してから動き出す。自信もあっただろうが、しかし3本勝負で1本取られたとき、下村さんの顔には不安と緊張の表情が貼りついていた。最後の1本で勝負が決まったとき、両手を挙げて飛び上がって喜んだのが印象的だった。終わってみれば、昨年の悔しさを見事に晴らした下村さんの順当勝ちだったが、やはりU-16プロコンにはドラマがある。

下村さんは全身で優勝の喜びを表現
下村さんは全身で優勝の喜びを表現

 今年の大会は、ITジュニア育成交流協会の協賛企業であるさくらインターネットの協力で、大会の模様をYouTubeのライブストリームで配信。大会の司会をITイベンターとしてつとに知られたさくらインターネットの法林浩之さんが務めたことで、例年にも増して盛り上がった大会になった。さらに、同じく協会協賛企業であるクリプトン・フューチャー・メディアやアイ・オー・データ機器、バッファローが副賞を提供している。

司会・実況で会場を盛り上げた法林浩之さん
司会・実況で会場を盛り上げた法林浩之さん

 地域の大人たちの志によって支えられた高校・高専の先輩たちが、子どもたちを大会まで導いていく――そんな理想的な仕組みをもった大会が成長を重ね、「プログラミングの世界に子どもたちの未来をつくる」イベントとして全国に発信できるレベルに成長しつつある。そんな印象を抱かせる今年のU-16プロコンだった。

決勝トーナメント出場者たちでパチリ
決勝トーナメント出場者たちでパチリ

(文:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)
(写真:道越一郎・市川正夫)

【協賛企業通信】冨田勲氏追悼特別公演、初音ミクがダンサーと共演

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 5月5日に慢性心不全のため84歳で亡くなった世界的なシンセサイザー音楽の第一人者で作曲家の冨田勲氏の追悼特別公演が、11月11・12日の2日間、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで開かれた。公演では、亡くなる1時間前まで氏が精力的に取り組んでいたスペース・バレエ・シンフォニー『ドクター・コッペリウス』が初めて披露された。

 『ドクター・コッペリウス』は、初音ミクとオーケストラ、バレエで宇宙への旅を描く作品。指揮は渡辺一正氏、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。バレエダンサーで、コッペリウス役の風間無限氏と初音ミクのパ・ド・ドゥ(二人踊り)を披露するなど、“世界のTOMITA”が遺した音楽の集大成に会場は酔いしれた。

『ドクター・コッペリウス』で初音ミクとのパ・ド・ドゥ(二人踊り)を披露するバレエダンサーでコッペリウス役の風間無限氏 ©Crypton Future Media,INC.www.piapro.net/photo by 高田真希子
『ドクター・コッペリウス』で初音ミクとのパ・ド・ドゥ(二人踊り)を披露するバレエダンサーでコッペリウス役の風間無限氏 ©Crypton Future Media,INC.www.piapro.net/photo by 高田真希子

 冨田氏が遺したストーリー原案と音楽構想にもとづいてプロジェクトメンバーが完成させた『ドクター・コッペリウス』は、宇宙を夢見るロケット開発者のコッペリウスが初音ミクと出会い、宇宙空間に飛び出すというストーリーだ。公演には、初音ミクの生みの親、クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之代表取締役が初音ミクの映像開発ゼネラルプロデューサーとして参画した。高校生の頃に冨田氏の音楽に触れ、感銘を受けたという伊藤代表取締役。ヴァーチャルシンガーとして冨田作品に初音ミクを出演させるのは、2012年初演の『イーハトーヴ交響曲』に続いて2作目となる。「初音ミクが人間のバレリーナとともに舞う。実在しない初音ミクを舞台に登場させて、他の演奏者と同じように指揮者の指揮に合わせて歌を歌うシステムは当社で開発した」と話す。

冨田作品ついて「70年代の初期の作品を聞いても古いという感じがしない。当時前例のないなかで、Moogシンセサイザーで試行錯誤してつくられたであろう音色が楽曲のなかにたっぷりと含まれていて、作品が単なる作曲にとどまらず、音響デザインになっているところがとても興味深い」と語るクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之代表取締役
冨田作品ついて「70年代の初期の作品を聞いても古いという感じがしない。当時前例のないなかで、Moogシンセサイザーで試行錯誤してつくられたであろう音色が楽曲のなかにたっぷりと含まれていて、作品が単なる作曲にとどまらず、音響デザインになっているところがとても興味深い」と語るクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之代表取締役

 作品は、間に合わなかった第1楽章と第2楽章を欠番にして、第3楽章から第7楽章までで構成。さらに、プロジェクトメンバーが冨田氏への想いを捧げる第0楽章を冒頭に付け加えて演奏された。随所に「TOMITAサウンド」がちりばめられ、冨田勲の遺作にふさわしい楽曲に仕上がっている。加えて初音ミクが歌い人間とともにバレエを踊るという近未来的な試みは、最後まで少年の心をもち続けた冨田氏らしさを表現していた。舞台上部、左右に配置した変幻自在に形を変えるスクリーンを使った斬新な映像演出も秀逸。舞台上で自由に動く人間のバレエダンサーに対し、スクリーンの中だけでしか踊れない初音ミク姿は、亡くなった冨田氏を表すかのようで、もの哀しくもあった。

会場では、思い出として追悼特別公演のパネルを写真に収める来場者も目立った
会場では、思い出として追悼特別公演のパネルを写真に収める来場者も目立った

 公演では、このほかオーケストラと合唱団、初音ミクを共演させ、宮沢賢治の世界を表現した『イーハドーヴ交響曲』や、冨田氏の代表作の一つ、ホルストの『惑星』のリミックス版『惑星 Planets Live Dub Mix』が披露された。もともとこの日は「冨田勲 生誕85周年記念 新作世界初演 冨田勲×初音ミク 『ドクター・コッペリウス』」が企画されていたが、冨田氏の遺志を継いで追悼特別公演というかたちで実現した。

 なお、『ドクター・コッペリウス』の再演が決定した。『冨田勲×初音ミク ドクター・コッペリウス』と題し、演奏は新日本フィルハーモニー交響楽団。東京・墨田区のすみだトリフォニーホールで2017年4月に開催する。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎)

子どもへのプログラミング教育実証、成果を発表──「教育の情報化」フォーラム開催

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 総務省は5月16日、東京証券会館で「教育の情報化」フォーラムを開いた。同省が2014年度に始めた「先導的教育システム実証事業」や16年度に始めた「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業の成果などを報告した。

 

 前半では、先導的教育システムとして「教育クラウド・プラットフォーム」の実証事業概要を紹介。時間や場所、端末やOSを選ばず、最先端のデジタル教材などを利用でき、かつ低コストで導入・運用可能なプラットフォーム事業を112校、1万3694ユーザーで実証した結果を報告した。フォーラム後半では、「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」について、事業成果と新規プロジェクトも紹介した。

 

東京証券会館で開かれた「教育の情報化」フォーラム
東京証券会館で開かれた「教育の情報化」フォーラム

 

 若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業は、小学校でプログラミング教育が必修化される20年を前に、プログラミングを通じて子どもたちの論理的思考力や課題解決力を育て、クラウドや地域人材を活用しながら低コストで効果的な実施手法や指導者育成方法を模索するために始めたもの。1プロジェクトあたりおよそ500万円の予算をつけ、プログラミング教育を企画・実施する事業者を公募した。条件は、地域の大学生や専門学校生などの人材を活用したプログラミング指導者(メンター)の育成を行って、小学校や中学校などで5回以上メンターによるプログラミング講座を行う、といったものだ。

 

「パソコン部がサッカー部と同じくらい人気の部活になるような社会にしたい」  と挨拶する、総務省の太田直樹 総務大臣補佐官
「パソコン部がサッカー部と同じくらい人気の部活になるような社会にしたい」  と挨拶する、総務省の太田直樹 総務大臣補佐官

 

 フォーラム開催にあたって、総務省の太田直樹 総務大臣補佐官は「指数関数的で急激な変化にさらされる現代社会。教育も変化が求められている。プログラムを学ぶ、ではなく、プログラミングで学ぶ、という考え方で子どもたちに理論的思考力を身につけてもらいたい」と話す。「子どもたちの間で、サッカー部と同じようにパソコン部の人気が出るような社会にしていきたい」と挨拶した。

 

 また、総務省情報流通行政局の御厩祐司 情報通信利用促進課長は「受講した児童生徒の92%が、プログラミングや講座について楽しかったと回答。71%が今後もプログラミングを続けたいと答えた」とし、大きな成果があったと話す。

 

「受講した児童生徒の9割以上が楽しかったと回答」などと事業の成果を発表する、総務省情報流通行政局の御厩祐司 情報通信利用促進課長
「受講した児童生徒の9割以上が楽しかったと回答」などと事業の成果を発表する、総務省情報流通行政局の御厩祐司 情報通信利用促進課長

 

 また、指導にあたったメンターについても「およそ7割が今後も指導を続けられると回答した。メンターを務めた高校生や大学生の反応は、自分の成長にもつながった、子どもたちのプログラムを見て考え方の視野が広がったなどの反応が見られた」と話した。さらに、今後の展開として「20年度には、クラウド上の教材や人材を活用したプログラミング教育を実施可能な学校を100%にしたい」と語った。

 

 16年7月~12月の間に開かれた初回は全国11ブロックで講座が実施され、756名の児童生徒が参加した。フォーラムでは11の実証団体の代表者が集まり、パネルディスカッションを実施した。北海道ブロックでLITALICOと共同し「発達段階(発達障害も含む)に合わせた異年齢協働プログラミング教育」と題したプロジェクトに携わった、北海道北広島市立東部小学校の設楽正敏 校長は「通常の授業では集中力が続かない児童も、プログラミングとなると8時間にわたって集中するような場面もあり驚かされた。子どもたちの得意分野を引き出す良いきっかけになった」などと感想を語った。

 

「子どもの能力を引き出すきっかけになった」と語る、海道北広島市立東部小学校の設楽正敏 校長
「子どもの能力を引き出すきっかけになった」と語る、海道北広島市立東部小学校の設楽正敏 校長
マインクラフトを活用した実証概要を説明する、日本マイクロソフトのパブリック             セクター統括本部文教本部 原田英典氏
マインクラフトを活用した実証概要を説明する、日本マイクロソフトのパブリック セクター統括本部文教本部 原田英典氏

 

 また、16年度の第2次補正予算で追加認定された19のプロジェクトについては、これから17年12月までに取り組む概要について代表者が説明。「教育版マインクラフトを活用したプログラミング的思考学習の推進」と題して実証する日本マイクロソフトのパブリックセクター統括本部文教本部 原田英典氏は、「土佐市と東みよし市で実証を行う。ゲームでおなじみのマインクラフトだが、教育版を利用して楽しみながらプログラミングを学べるように工夫する」などと話した。(BCN・道越一郎)

 

【協賛企業通信】プログラミングの楽しさを伝えるKidsVentureの新たな挑戦

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 講座を通じて子どもたちにプログラミングの楽しさを伝えるKidsVenture。今、新たなチャレンジを始めている。主催企業の一つ、さくらインターネットが提供を始めたIoTモジュールと組み合わせて、「子どもIoT」「子どもオープンデータ」を実現する取り組みだ。プログラミングを教えることから始まり、子どもたちのアイデアが実際に社会に役立つ場面も出始めた。KidsVentureの代表を務める、さくらインターネットの高橋隆行さんに話を聞いた。

KidsVentureの代表を務める、さくらインターネットの高橋隆行さん
KidsVentureの代表を務める、さくらインターネットの高橋隆行さん

 KidsVentureとは、さくらインターネット、ビットスター、ナチュラルスタイル、jig.jpの4社が主催する非営利団体。2015年の設立以来、子ども向けプログラミング教室を運営してきた。教材は、jig.jpの福野泰介さんが開発した1500円で買えるマイコンボード「IchigoJam」。1500円なので「イチゴ」ジャムというわけだ。IchigoJamは誰もが使えるのが最大の特徴。PCやタブレット端末がなくても、テレビとキーボードにつなぎさえすれば、すぐにプログラミングを楽しめる。

わずか1500円のマイコンボード「IchigoJam」。テレビとキーボードをつなげるだけで、すぐにプログラミングで遊べる
わずか1500円のマイコンボード「IchigoJam」。テレビとキーボードをつなげるだけで、すぐにプログラミングで遊べる

 「1976年4月にApple Iが出て40年。当時の価格は666ドル66セントでした。IchigoJamの価格は単純計算でも40分の1。そしてCPUのスピードは40倍に速くなりました。当時、PCなんて高く買えなかった。とても高価なおもちゃでした。BASICが走るマイコンが1500円で買えてしまう時代になったんです。安いので壊れても惜しくないし、プログラミングを教える教材としては最適です」と高橋代表は語る。

 最初の講座は4時間。子どもたちは、半田ごてを握ってIchigoJamを組み立てるところから始める。ボードが完成すると、BASICを使ったプログラミングを学び、簡単なゲームを作りながら自分たちで学ぶきっかけを得ていく。受講料は、IchigoJamとテキストがついて2000円。ほぼ原価だ。

子どもたちは半田ごてを片手に「IchigoJam」を組み立てるところから始める(2017年7月KidsVenture大阪開催)
子どもたちは半田ごてを片手に「IchigoJam」を組み立てるところから始める(2017年7月KidsVenture大阪開催)

 代表講師を務めるナチュラルスタイルの松田優一さんを筆頭に、講師は5名。4名の講師候補生とあわせ計9名で、北海道から福岡まで全国で講座を展開している。講座が終われば、持ち帰って自宅ですぐに使えるとあって、これまで実施したおよそ20回は、どの回も募集を開始するとすぐに満席になったという。

 KidsVentureが現在計画しているのが、IoTモジュールとIchigoJamを組み合わせて行う「Next Step」講座だ。さくらインターネットがIoTシステム向けに提供を開始した「さくらの通信モジュール」を、IchigoJam用に新たに開発したインターフェイスボード「IchigoSoda」を介して接続。通信モジュールにはソフトバンクのSIMが組み込まれており、LTE回線を通じてデータを送信することができる。

 「通信モジュールが1台8000円ですから、インターフェイスボードとIchigoJam本体をあわせて全部で1万2~3000円ぐらいにできれば、と思っています。遅くとも今年に秋ぐらいまでには量産して販売する計画です。このセットを使って、Next Step講座を開きたいと思っています」(高橋代表)。

1枚8000円のIoTモジュール。あらかじめSIMがセットされており、石狩データセンターに収集したデータを直接送ることができる
1枚8000円のIoTモジュール。あらかじめSIMがセットされており、石狩データセンターに収集したデータを直接送ることができる

 IoTで問題になるのはランニングコスト。携帯電話並みの月額料金がかかるようでは、とても子どもの教材には使えない。しかし、このシステムの利用料は税別で月額60円と、非常に安く抑えている。データのやりとりは1万回が上限だが、ユニットから発信されるデータは、直接さくらインターネットの石狩データセンターのサーバーに格納されるためハッキングされにくい。しかも40日までであればデータベースの利用料は無料だ。

 APIを使えばデータを簡単に引き出せ、システム全体をとても安価で使うことができる。さくらインターネットではこのIoTプラットフォーム全体を「sakura.io」と名付け、ビジネスでも展開しているが、それが子どもたちでも使える、というわけだ。これで、子どもが自由にIoTの世界を楽しめる枠組みができた。

さくらインターネットが提供するIoTプラットフォーム「sakura.io」
さくらインターネットが提供するIoTプラットフォーム「sakura.io」

 「たとえば、これで夏休みの宿題を自動化できますよね。気温を毎日記録するのは実はあまり重要ではなくて、その記録から何を読み取るかが大事です。また、最近では自治体で子どものアイデアを地域の問題解決に活かすという動きも出てきています。塩尻市などはいい例です。土壌の水分を定期的に観測し、土砂崩れの危険度を把握したり、橋のメンテナンスの基礎データを収集したりといった用途で子どもIoTが走り始めています」(高橋代表)。子どものIT技術を駆使した社会貢献活動だ。

 「どの橋を優先的にメンテナンスするかは自治体にとって悩ましい問題です。今となっては、ほとんど使われていない橋もあります。実際にどの程度利用されているかはIchogoJamに赤外線センサーを組み合わせれば計測できます。それをIoTモジュールと組み合わせ定期的にデータ送信し、サーバーに蓄積できるわけです。全く使われていない橋は取り壊し、利用頻度の高い橋を優先的にメンテナンスにかけることができます」(高橋代表)。こうした地域の困りごとを子どもと一緒に解決するアイデアを出し合って、実際に解決できるのが、IchogoJamとIoTモジュールの組み合わせだ。

熱心に講座を受講する子どもたち(2017年2月、KidsVenture沖縄開催)
熱心に講座を受講する子どもたち(2017年2月、KidsVenture沖縄開催)

 子どもたちばかりではない。IchigoJamが教育用途から飛び出して、実用の世界で使われる可能性も広がっている。害獣としてイノシシを捕獲する際、ワイヤーを使った仕掛けだと警戒心の強いイノシシはなかなか捕まらない。しかし「IchigoJamに赤外線センサーをつなぎ、光が遮られると扉が閉まる檻ならばんばん捕獲できるんです。これを考えたのがなんと65歳の猟師の方」だという。リタイアして、余暇を使って自分の作りたいモノを作るために、80代でIchigoJamを使ってプログラミングを始めるような人も現われ始めているという。

「IchigoJam」にインターフェイスボードの「IchigoSoda」を介してIoTモジュールを直接セットできるようにした。これで日本国中どこからでもデータを送ることができる
「IchigoJam」にインターフェイスボードの「IchigoSoda」を介してIoTモジュールを直接セットできるようにした。これで日本国中どこからでもデータを送ることができる

 Next Step講座は、ゲームなど簡単な遊びを入り口にプログラミングの世界に触れた子どもたちが、IoTという新しい道具を手にすることで、実際に役立つプログラミングを気軽に経験できる。計り知れない大きな可能性を秘めた試みだ。

 「センサーでデータを収集してサーバーに送信するところまでは、実は簡単なんです。問題はその後。サーバーに格納したデータをどうやって取り出すか。どう加工するかあたりのノウハウは小学生には難しい。この辺はさくらインターネットの本業で私たちの得意分野なんですが、やはり対象は中学生ぐらいが中心になると思います。受講生からベンチャー企業を興すような人が出てくるとうれしいです。熱意あふれるチャレンジングな子どもたちを輩出したいですね」(高橋代表)。

「熱意あふれるチャレンジングな子どもたちを輩出したい」と語る、KidsVentureの高橋隆行代表
「熱意あふれるチャレンジングな子どもたちを輩出したい」と語る、KidsVentureの高橋隆行代表

 現在はNext Step講座のカリキュラムづくりに取り組んでおり、年内にも講座を始められる見込みという。子どもIoT、子どもオープンデータを実現し、子どもたちもそういった活動ができるんだ、ということを示すことになるだろう。KidsVentureの取り組みは日本にとどまらない。ベトナム、タイ、そして今年の秋、ルワンダとケニアにもIchigoJamの環を広げよう計画中だ。プログラミングには国境はない。小さなマイコンボードでITの魅力を味わった子どもたちのなかから、IT業界の巨人が生まれるのも、そう遠い将来ではなさそうだ。(BCN・道越一郎)


「暑い」なんて言っていられない! 高専プロコン夏の陣

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今年で28回目を迎える全国高等専門学校プログラミングコンテスト(高専プロコン)。10月の本選に向けて、動きが活発になりつつある。

 

東京高専での高専プロコン連携シンポジウム
東京高専での高専プロコン連携シンポジウム

これからが本番! 予選通過チームが決まる

 1990年に第1回を開催し、今年で第28回を迎える高専プロコンは、全国の高専で情報処理技術を学ぶ学生たちが「アイデア」と「実現力」を競うことで、学習意欲と技術、発想力を高めていくことを目的とした大会だ。テーマに沿った作品をつくる課題部門、自由なテーマで独創的な作品をつくる自由部門、与えられたルールで対抗戦を行う競技部門の3部門がある。また、国際交流活動として、NAPROCK国際プログラミングコンテストを同時開催する。

 6月24日には、東京都立産業技術高専品川キャンパスで、全国の高専から応募された作品のなかから本選に出場するチームを決める予選が行われた。予選の選考では高専生らしい独創的な「アイデア」が重視され、作品の完成・未完成は問われない。今年は課題部門に54作品、自由部門に61作品の応募があり、それぞれ20作品が本選出場を果たした。また、競技部門は59高専(キャンパス)の応募があり、全チームが本選に出場することになった。

 予選の講評によれば、「スポーツで切り拓く明るい社会」をテーマにした課題部門は、課題が2年目を迎えることから作品の練度が向上し、アイデアが広がったという。自由部門は、本選では実現性・有用性が問われることを前提に、これから本選までの開発作業への期待を表明。競技部門は、今年は全チームが予選を通過したが、あらためて各チームが情報技術を活用してどのような戦略を立ててくるのか、本選を「楽しみにしている」とした。

 今年の夏は猛暑になるが、予選を通過したチームのメンバーは「暑い」などとこぼしている暇はなくなる。これからの3カ月、チームは作品づくりに明け暮れる。各校のチームがどんなプログラムを書き、どんな作品をつくり上げてくるのか、大いに期待したい。全国高等専門学校第28回プログラミングコンテストは、大島商船高等専門学校を主管校に、10月8~9日の2日間にわたって山口県周南市の周南市文化会館で開催される。大会のスローガンは、「IT志士たち,よーけ集まるであります。」だ。

 

東京高専で東芝による高専プロコン連携シンポジウム開催

 6月27日には、東京高専で高専プロコン連携シンポジウムが開催された。これは、高専プロコンの協賛企業がプロコン作品の開発に役立つ情報や最新のIT技術の情報などを提供するシンポジウムで、国立高専のビデオ会議システム(GI-net)を利用して全国の高専に向けて配信される。

 

東芝インダストリアルICTソリューション社の遠藤直樹氏
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)客員フェローで東芝インダストリアルICTソリューション社の遠藤直樹氏

 今回は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)客員フェローで東芝インダストリアルICTソリューション社の遠藤直樹氏が「AIやIoTはどこへ行く? ~技術の将来像を考えてみましょう~」のテーマで講演。会場では東京高専プロコンゼミの学生を中心に約30人の学生が、NEDOの技術開発への取り組みやIoTの現状、東芝コミュニケーションAI「RECAIUS(リカイアス)」などの話に聞き入った。

 シンポジウム中には全国からツイッターに感想や質問がアップされ、質疑応答ではAIのセキュリティや倫理問題に関する質問が出て、講師の遠藤氏をうならせていた。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)

ドスパラがリユースPC贈呈式、水戸工業高校のマイコン部・工業技術部に

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 企業から高校の情報技術系クラブに「自由に使うことができるPC」を贈るITジュニア育成交流協会のリユースPC寄贈斡旋プログラム。7月27日、昨年度の寄贈対象校の一つ、茨木県立水戸工業高等学校で、協会の協賛企業、ドスパラによるリユースPCの贈呈式が行われた。今回、水戸工業高校のマイコン部・工業技術部にリユースPCを提供したのはネクスウェイとドスパラの2社で、合わせて20台のノートPCを寄贈した。贈呈式では、ドスパラの西尾伸雄社長がマイコン部1年生の青柳夏輝君に目録を手渡した。

マイコン部1年生の青柳夏輝君(左)にリユースPCの目録を手渡す西尾伸雄社長(右)。見守るのは、マイコン部・工業技術部顧問の山﨑悟先生(右奥)とマイコン部顧問の中島智広先生(左奥)
マイコン部1年生の青柳夏輝君(左)にリユースPCの目録を手渡す西尾伸雄社長(右)。見守るのは、マイコン部・工業技術部顧問の山﨑悟先生(右奥)とマイコン部顧問の中島智広先生(左奥)

 青柳君は、寄贈されたPCの使い道について、「マイコン部が取り組んでいる自律型ロボットの国際コンテスト、WRO(World Robot Olympiad)で活用したい」と話した。ドスパラの西尾社長は、「寄贈したPCが実際に皆さんの役に立つのはとてもうれしい。自由にどんどん使ってもらって、その経験をもとに将来ゲームをつくったり、社会に役立つアプリを開発したりという活動につなげてほしい」と励ました。

 情報技術科実習助手でマイコン部顧問の中島智広先生は、「学校にあるPCでは、プログラミング環境は整っているが、OSやソフトのインストールはあまり経験できない。環境構築の段階から自由に使えるリユースPCはとてもありがたい」と感謝した。

マイコン部・工業技術部の1年生の皆さん。夏休み中、贈呈式のために集まってくれた
マイコン部・工業技術部の1年生の皆さん。夏休み中、贈呈式のために集まってくれた

 情報技術科教諭でマイコン部・工業技術部顧問の山﨑悟先生は、「リユースPCをCやJAVAなどの言語実習に活用したい。また、アルディーノやラズベリーパイなどのマイコンをコントロールするのにちょうどいいので、ロボコンのプログラム制御にも使用できる。学校にはデスクトップPCしかなく、今回寄贈を受けたノートPCが初めてのモバイル環境だ。持ち運んで使える環境はとても貴重でありがたい」と話した。総勢40名の部員のマイコン部と工業技術部が目指す次の目標は、12月に開催される情報オリンピックの予選通過。贈られた20台のモバイル環境が大活躍するに違いない。

茨木県立水戸工業高等学校は、水戸駅から車で10分ほどの元吉田町にある
茨木県立水戸工業高等学校は、水戸駅から車で10分ほどの元吉田町にある

 企業・団体で使わなくなったPCを学校などで活用してもらおうと、Tジュニア育成交流協会が2012年に始めたリユースPCの寄贈斡旋プログラム。5年目となる昨年度は、水戸工業をはじめ4校に56台のリユースPCを提供した。
(ITジュニア育成交流協会 道越一郎)

夏から始まるU-16プロコン、事前講習会で中学生がプログラミングを学ぶ

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 ゼロからプログラミングを学ぶ子どもたちを、いまプログラミングを学んでいる先輩たちが導く――そんなすばらしい仕組みをもっているのが、U-16プログラミングコンテストだ。この夏、北海道旭川市と愛媛県松山市で、秋・冬の大会を見据えたプログラミング教室(事前講習会)が開催された。

U-16プログラミングコンテスト旭川事前講習会会場の旭川市科学館
U-16プログラミングコンテスト旭川事前講習会会場の旭川市科学館

 2011年に始まったU-16プログラミングコンテスト旭川大会は、旭川市や近郊の中学校・高等学校に在籍する16歳以下(高校1年生以下)の子どもたちを対象にしたプログラミングコンテストで、毎年参加者を増やしながら今年で7回目を迎える。競技部門と作品部門があり、競技部門は対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」の上で参加者が作成したプログラム同士が戦って勝敗を決める。観客の目の前で自分の書いたプログラムが戦うという、まさにスポーツの試合のような興奮を伴う部門だ。作品部門は、CGやウェブコンテンツ、アプリ、音楽など、プログラムを用いて制作した作品であれば自由に参加できる。

 11月5日の大会に向けて、実行委員会は7月28日と31日の両日、旭川市科学館で競技部門の参加者を対象に事前講習会を開催した。参加したのは28人の中学生で、愛別や中富良野といった旭川市外からの参加者もみられた。実行委員会の北海道旭川工業高校・下村幸広教諭によれば、毎年まとまった人数が参加する市内の中学校は、独自に講習を行っているという。

テキストやスライドは高専生・高校生の合作だ
テキストやスライドは高専生・高校生の合作だ

 講習会の講師を務めたのは、旭川工業高等専門学校と旭川工業高校でプログラミングを学ぶ生徒・学生たち9人。合同チームをつくってテキストを作成し、プログラミングの基本と競技部門で使用する「CHaser旭川版」のプログラミングを教えた。実行委員会の大人たちが登場するのは開会と閉会の挨拶だけで、講習中は口は出さない。高専生・高校生を信頼し、すべてを任せて温かく見守っている。彼らは「教えることの難しさ」を体感しながら、それを乗り越えて自らも学び、成長していくのだ。

教える側と学ぶ側の年齢が近iいのでコミュニケーションはスムーズ
教える側と学ぶ側の年齢が近iいのでコミュニケーションはスムーズ

 講習会は用語の解説から始まり、競技の仕組みとコマの動きを制御するプログラミングの説明に入っていく。中学生たちはほとんどがプログラミングの経験がなく、「ちょっと興味がある」「人にすすめられた」というのが参加理由。ゲームへの興味も大きな動機になっているようだ。

 講習会終了後、子どもたちは中学校のクラブ活動などで自分のプログラムを磨いていくのだが、わからないことが出てきたり、行き詰まってしまったりしたときは、実行委員会に連絡すると、高専生・高校生たちが中学校に来て教えてくれる。そんな大会参加に向けたフォローが、U-16プロコンが地域に根づいてきた大きな要因の一つだろう。

夏休み親子ものづくり体験教室の会場、松山市のポリテクセンター愛媛
夏休み親子ものづくり体験教室の会場、松山市のポリテクセンター愛媛

 一方、昨年12月に第1回U-16プログラミングコンテストを開催した愛媛県松山市でも、ポリテクセンター愛媛で開催される人気のイベント、夏休み親子ものづくり体験教室のなかで、昨年に続いて「プログラミング体験教室」が開催された。ポリテクセンター愛媛と、教室開催の中心である愛媛県立松山工業高校の山岸貴弘教諭が検討を重ね、昨年の経験を踏まえて募集を中学生に絞り、講習時間は4時間を確保し、申込みも事前登録制にした。もちろん、12月に松山工業高校で開催する第2回U-16プログラミングコンテスト松山大会の参加者を募る「事前講習会」の意味合いももっている。ちなみに、昨年の大会開催実績もあって、キャンセル待ちが参加者と同じ人数になるくらいの人気プログラムだったという。
 参加したのは中学生16人。いずれもプログラミングの経験はなく、キーボードの扱いに慣れている子どもは2~3人だった。講師は松山市内でシステム開発会社を経営する松本純一郎氏がプログラミングの基礎を担当し、松山工業高校メカトロ部プログラミングコンテストチームの8人がチューターになって直接中学生たちを教えていく。松山工業高校メカトロ部は、高校生プログラミングコンテスト(高校プロコン)で使われる対戦型ゲーム「CHaser」についての技術とノウハウにかけては超一流。昨年は、高校プロコンで日本一に輝いており、チューターにはそのメンバーも残っている。いわば日本一の先生たちだ。

2人の中学生を1人の高校生が指導する
2人の中学生を1人の高校生が指導する

 2人の参加者に1人のチューターがつき、プログラミングの基礎と「CHaser」のコマの制御を教えていき、意図した通りにプログラムが実行されると、参加者から声が上がる。行き詰まるとチューターもいっしょになって考え、バグをつぶしていく。ディスプレイを見つめる子どもたちの目は、真剣そのもの。体験教室の最後、参加者のプログラム同士で対戦が行われると、全体から歓声が上がった。12月17日の松山大会に向けて、学ぶ側も教える側も、大きな手応えを得た瞬間だった。

テキストとディスプレイに注がれる真剣なまなざし
テキストとディスプレイに注がれる真剣なまなざし

 旭川と松山、二つの講習会で最も印象に残ったのは、参加した中学生たちの集中力・理解力の高さと、教える高校生・高専生の真剣な表情だった。友人と連れ立って参加した中学生でも無駄口はほとんどなく、テキストとディスプレイを交互に見つめ、ぎこちないしぐさでキーを叩いている。教える高校生・高専生は言葉を選びながら、伝わらないと感じるとさらに言葉を探しながら、ときおりキーボードに手を伸ばして指導する。「ITジュニアの卵」たちが、これから先、大きく羽ばたいていくことを確信できたのは、見守る大人にとってもこの夏の大きな収穫だった。

 ITジュニア育成交流協会は、「先輩が後輩を教える」仕組みをもつU-16プロコンの全国各地域への展開を支援している。多くの子どもがプログラミングの楽しさに触れ、日本の未来を担うITジュニアとして育っていくために、地域の志ある大人たちとともにU-16プロコンの定着を目指す。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)

若年者ものづくり競技大会電子回路組立て、四国職能開大学校から初の金賞

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 今年で12回目を数える若年者ものづくり競技大会が、8月3日と4日の2日間、愛知県で開催された。メカトロニクスや旋盤、ウェブデザインなど15の職種が会場に分かれて行われた。BCN ITジュニア賞の対象である電子回路組立ては、電気工事やグラフィックデザイン、造園などと同じ名古屋市の中小企業振興会館で実施された。

28名が競った電子回路組立て
28名が競った電子回路組立て

 28名の選手が参加した電子回路組み立て部門の金賞/厚生労働大臣賞は、四国職業能力開発大学校の大西海輝選手。四国職業能力開発大学校は、5回目の挑戦で初の金賞を射止めた。強豪校の長野県松本工業高校や愛媛県立松山工業高校はいずれも銀賞で、一歩及ばなかった。関係者の話では、今年の課題は例年よりも難易度が低く、僅差の戦いだったという。

電子回路組み立て部門で金賞を受賞した、四国職業能力開発大学の大西海輝選手
電子回路組み立て部門で金賞を受賞した、四国職業能力開発大学の大西海輝選手

 4時間の競技時間内に小規模な組込みシステムの開発を行う電子回路組立て部門。選手はまず、あらかじめ知らされている仕様書に従って基盤の組立てから始める。すばやく正確に部品を取りつけ、ハンダづけしていく地道な作業だ。現実のものづくりの世界では、ハンダづけは耐久性だけでなく電気特性にも影響を与える重要で繊細な作業だ。仕様書は部品取りつけの形態からハンダの乗せ方まで、詳細に指示されており、これらが採点の基準になる。選手は日頃使い慣れた作業環境を会場に持ち込み、真剣に組立てに臨んでいた。

選手たちが組み立てた基盤。右上の板状の部品が液晶ディスプレイだ
選手たちが組み立てた基盤。右上の板状の部品が液晶ディスプレイだ

 基盤が完成すると、次はプログラミングだ。競技開始時に発表された五つの動作モードをプログラミングで実装していく。今回はボリュームつまみを回すとレベルメーターが上下するようにしたり、色を変えて表示させたりといったものから、傾きセンサを使った水準器表示、イラストを表示とその反転などが課題だった。日々利用する電子機器でよくみられる表示や動作で、一見簡単な制御だが、実際にプログラミングしていくとなると意外に大変な作業だ。仕様書は、プログラム記述上のガイドラインをこと細かに示している。ソースコードの読みやすさ、整然とした関数名のしかたや、的確なコメント文の記述なども求められており、可読性が高く保守性にすぐれたソースコードの記述も審査の対象になる。4時間が経過すると、USBメモリにプログラムを保存し、基盤とともにプリントアウトしたソースコードを提出して競技が終了した。

ハンダづけからプログラミングまで、現代のものづくりを実践
ハンダづけからプログラミングまで、現代のものづくりを実践
自ら組み上げた基盤にプログラミングで命を吹き込む
自ら組み上げた基盤にプログラミングで命を吹き込む

 なかにはプログラム作成段階で基盤の修正を行っている選手もおり、基盤作成とプログラミングが表裏一体になったこの競技の難しさを感じさせた。ハードウェアとソフトウェアの両方がわかるエンジニアは、現代のものづくりでは不可欠な存在。熱戦を繰り広げた28人の選手は、いずれ日本のものづくりの根幹を支える人材に成長していくに違いない。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 道越一郎)

今年も熱いぜ!ものづくりへのパッション──Maker Faire Tokyo 2017開催

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 何でも自分で作ってしまおう……ものづくりの祭典、Maker Faire Tokyo 2017が8月5日と6日の2日間、お台場の東京ビックサイトで開かれた。08年に始まり、今年で13回目を数えるMaker Faire Tokyo。今年は約450組が出展し、電子工作やロボット、楽器やアートなどありとあらゆるジャンルで思い思いのものづくりの成果が大集結した。実用的な作品もさることながら、何の役に立つのか首をひねるようなウケ狙いの出展も数多く、素直に楽しめるイベント。子ども連れの家族の姿もあちこちで見られた。

東京ビッグサイトで開かれたMaker Faire 2017。前回は西ホールでの開催だったが、今年は2016年に増設された東7・8ホールで開催した
東京ビッグサイトで開かれたMaker Faire 2017。前回は西ホールでの開催だったが、今年は2016年に増設された東7・8ホールで開催した

 今年のMaker Faire Tokyoの大きな特徴は、マイコンボードの定着と広がりだろう。定番のRaspberry Piや激安のIchigoJamを使って動きを制御するロボットやIoT機器などの出展はもはや当たり前。さらに今年は、ASUSのTinker BoardやイギリスBBCのmicro:bitなど、新たなマイコンボードも会場で披露され、Makerたちの心をくすぐった。しばらく前なら数万円数十万円と高価だったコンピュータが、数千円で誰でも利用できるようになってきたことで、コンピュータ制御を取り入れたものづくりをしやすい環境が整ってきた。

ハイパフォーマンスのマイコンボード、ASUSのtinker boardが日本で初お目見え。先行販売した50台は早々と完売した
ハイパフォーマンスのマイコンボード、ASUSのtinker boardが日本で初お目見え。先行販売した50台は早々と完売した

 また、2020年から小学生向けプログラミング教育が始まるのを契機に、子ども向けの出展も目立った。特に、教育用プログラミング言語Scratchを利用した「子どもプログラミング喫茶」、動きを自由にプログラムできるタミヤの「カムプログラムロボット工作キット」に先行販売には、熱心な子どもたちが集まっていた。

子どもたちが6つのプログラミングメニューで遊べる「子どもプログラミング喫茶」
子どもたちが6つのプログラミングメニューで遊べる「子どもプログラミング喫茶」

 Maker Faire Tokyoは、特に子ども向けではなくても、子どもの心を刺激する展示や出展にあふれている。惑星探査に使われるようなロボットを興味津々に眺めたり超小型ホバークラフト体験ではしゃぐ子どもたち。こんなところからものづくりの楽しさに目覚めていくのだろう。

超小型ホバークラフトの体験試乗では、子どもも大人も大はしゃぎ
超小型ホバークラフトの体験試乗では、子どもも大人も大はしゃぎ

 実用性の高い出展も多い。常連とも言える「きゅうり仕分け3号機」は、きゅうり農家Workpilesさんが制作したもので、病気の有無や曲がり具合などをディープラーニングの応用で判定、9等級に仕分けする。きゅうりを痛めないよう、昨年まで実装していたベルトコンベア式の仕組みを改め、ディスプレイ上に置くだけで判定する仕組みに進化させた。

もはや常連、AIを駆使したきゅうり仕分けマシンの出展。今年はきゅうりを痛めないようベルトコンベアを廃止
もはや常連、AIを駆使したきゅうり仕分けマシンの出展。今年はきゅうりを痛めないようベルトコンベアを廃止

 超小型の真空管「Nutube」を開発したコルグは、Nutubeを応用したヘッドホンアンプキットを出展。なんと9Vのバッテリ2本で動作し、真空管ならではの丸みがあって骨太なサウンドが特徴。ケースは付属しないが、真空管アンプを持ち運べる大きさにまとめた。コルグのNutubeは、液晶が普及する以前、電卓などで数値などを表示するために使われていた蛍光表示管の構造を応用した真空管。音楽の世界では、独特のサウンドを生み出す部品として真空管を好んで使うことも少なくない。

常識では考えられないほど小型・省電力で稼働する真空管式のヘッドホンアンプ。コルグのNutubeを応用した組み立てキットだ
常識では考えられないほど小型・省電力で稼働する真空管式のヘッドホンアンプ。コルグのNutubeを応用した組み立てキットだ

 音系では楽器の出展も多い。演奏しながらその場で販売していたのがSlaperoo Percussionが出展した「スラップスティック」だ。エレキギター風の楽器だが、形状は一本の棒。弦の代りに薄い金属製の板を抑えつつ叩いて演奏する。エレキベース風の音で、うまく弾けるとなかなカッコいい。興味を持った来場者が次々と購入していた。

新しい電気打楽器「スラップスティック」。音色はエレキベース風
新しい電気打楽器「スラップスティック」。音色はエレキベース風

 渋い、ナンセンスな展示もMaker Faireの見所。なかよしさんが出展した「拍手をあびるシャワー」は、壁面に蛇口のハンドルと頭上にシャワーヘッド状のものがセットになった展示だ。拍手の音がシャワーのように降り注ぎ「自分に拍手を贈ることができる」装置だという。ハンドルをひねるとシャワーヘッド状の形状のスピーカーから拍手の音が流れる、という仕組み。頭上から拍手を浴びながら笑ってしまう展示だ。

「拍手をあびるシャワー」。ハンドルをひねると頭上から拍手が降ってくる
「拍手をあびるシャワー」。ハンドルをひねると頭上から拍手が降ってくる

 実用的なのかウケ狙いなのか判断に迷う展示も楽しい。常に人だかりが耐えなかったのは坂井義治(めだか部)さんが出展した全自動眼鏡洗浄ロボ「洗っとく子ちゃん」だ。3軸関節ロボットを使った筐体に眼鏡をセットすると、器用に眼鏡の角度を変えながら洗剤を振りかけ、水洗いし、ブロワーで乾かすというもの。細かな動きがコミカルでついつい見入ってしまう。

全自動眼鏡洗浄ロボ「洗っとく子ちゃん」。眼鏡をセットするだけで、あとはすべて自動でこなす
全自動眼鏡洗浄ロボ「洗っとく子ちゃん」。眼鏡をセットするだけで、あとはすべて自動でこなす

 年々勢いを増すMaker Faire Tokyoでは今年も、ものづくりへのパッションで満ちあふれていた。この中から、ソニーやパナソニックを追いかける、次世代の企業が生まれてくるに違いない。(BCN・道越一郎)

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